現場に入るために建設キャリアアップシステム(CCUS)へ登録し、カードを作り、就業履歴を積んできた——ここ数年で一気に広がったこの仕組みも、廃業となると扱いに迷います。事業者としての登録はどうなるのか。積み上げた技能者の履歴は消えてしまうのか。会社を畳んだら、職人本人のカードも使えなくなるのか。
この記事では、CCUSの「事業者」と「技能者」で扱いがまったく違うという前提から、廃業時に何をすべきかを整理します。とくに職人本人にとっては、知らないと損をする部分があります。
事業者IDと技能者IDは別のもの
CCUSには大きく2種類の登録があります。ここを混同すると、必要のない心配をすることになります。
| 事業者ID | 技能者ID | |
|---|---|---|
| 誰の登録か | 会社・事業所 | 働く人本人 |
| 費用の負担 | 事業者が支払う | 本人(会社が負担する場合もある) |
| 廃業したら | 使わなくなる | 本人のものとして残る |
| 蓄積されるもの | 現場の情報など | 就業履歴・保有資格 |
いちばん大事なのはここです。技能者IDは働く人個人に紐づいているため、所属していた会社が無くなっても消えません。これまで積み上げた就業日数も、登録した資格も、本人のものとして残ります。次の職場に移っても、同じIDを使い続けられます。
逆に言えば、事業者としての登録は会社に紐づくため、会社が無くなれば役目を終えます。ここを混同して「廃業したら職人のカードも無効になる」と思い込み、従業員に誤った説明をしてしまうケースがあります。伝えるときは、事業者と技能者を分けて話してください。
事業者としてやること
会社を畳む側としては、事業者情報の扱いを整理する必要があります。手続きの方法や必要書類は制度の運用によって変わるため、CCUSの公式サイトか問い合わせ窓口で最新の手順を確認してください。
そのうえで、実務として押さえておきたいのは次の点です。
- 利用料金の支払いを止める——登録したままだと、利用の有無にかかわらず費用が発生し続けることがあります
- 所属していた技能者の紐づけを整理する——本人が次の職場で手続きしやすくなります
- 元請として登録した現場情報を確認する——進行中の現場が残っていないかを見ておきます
廃業にともなって止めるべき支払いは、CCUSに限りません。通帳を1年分さかのぼって洗い出す方法は廃業の「見えない固定費」を断ち切る|商工会・固定電話・事業用口座を解約する順番にまとめています。
技能者にとっては「資産」になる
会社が無くなることを、そこで働いていた職人の立場から見ると、話が変わります。CCUSに蓄積された就業履歴は、次の仕事を探すときの実績になります。
履歴書に「〇年の経験があります」と書くのと、システム上に就業日数が記録されているのとでは、説得力が違います。とくに次のような場面で効きます。
- 次の会社に移るとき——経験年数を客観的に示せます
- 能力評価(レベル判定)を受けるとき——就業日数が判定の材料になります
- 資格の実務経験を証明するとき——会社が無くなった後は、証明を頼む相手がいなくなります
最後の点は特に重要です。実務経験の証明は、通常その会社に依頼します。廃業してしまうと、それができなくなります。会社があるうちに、必要な証明書類を出してもらっておいてください。
廃業前に、従業員のために確認しておくこと
事業主の立場でできることもあります。従業員が次の職場へ移るとき、困らないように整えておくと親切です。
- 就業履歴が正しく登録されているか——カードリーダーの読み取り漏れがないか確認します
- 保有資格の登録が最新か——資格を取ったのに未登録のままだと、レベル判定に反映されません
- 実務経験証明書を発行しておく——会社印が押せるうちに済ませます
従業員への対応全般は工務店が廃業するとき従業員はどうなる?解雇・退職金・転職支援の対応方法と注意点に、退職後の転職については廃業後の大工・職人の転職先は?建設系の経験・資格を活かした仕事の探し方にまとめています。
よくある質問
- 会社が廃業したら、自分のカードは使えなくなりますか?
- いいえ。技能者IDとカードは本人のものなので、そのまま使えます。次の現場でも読み取りができ、就業履歴は続けて積み上がります。所属事業者の情報を変更する手続きは必要になりますが、IDそのものが失われることはありません。
- 一人親方も登録していますが、廃業したらどうなりますか?
- 一人親方は、事業者としての登録と技能者としての登録の両方を持っていることがあります。事業者としての登録は使わなくなりますが、技能者としての履歴は残ります。後日どこかの会社に勤めるとしても、これまでの就業履歴は活きます。一人親方の廃業手続き全般は一人親方の廃業手続きを完全解説|廃業届・建設業許可・社会保険・確定申告の流れを参照してください。
- 登録したままにしておくと、何か問題がありますか?
- 事業者の登録には利用料がかかるため、使わないまま放置すると費用だけが発生し続ける可能性があります。金額は事業規模によって異なるので、まず自分がいくら払っているのかを確認してください。年払いの場合、通帳を見ないと気づきにくい支出のひとつです。
- 技能者の情報を、事業主が勝手に削除できますか?
- 技能者IDは本人に帰属するものなので、事業主の判断だけで本人の登録を消すことはできません。会社としてできるのは、自社との紐づけを整理するところまでです。従業員には、次の職場で所属の変更手続きが必要になることを伝えておいてください。
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CCUSは運用の見直しが続いている制度です。手続きの方法・費用・必要書類は変わることがあるため、実際に進める前に公式サイトまたは問い合わせ窓口で最新の情報を確認してください。
会社は無くなっても、現場に立ってきた記録は本人に残ります。事業主にできる最後の仕事は、その記録を正しい形で残してから畳むことです。証明書に会社印を押せるのは、会社があるうちだけです。
