建設業許可の有効期間が近づくと、更新の案内が届きます。数年前なら何も考えずに更新していたはずのその通知が、廃業を考え始めた年には重く感じられます。更新には費用も手間もかかるのに、あと何年続けるか自分でも分からない。かといって、何もしないまま期限を過ぎてしまってよいものかも判断がつかない——そんな状態で止まっている方は少なくありません。
この記事では、更新せずに許可を失効させた場合と、廃業届を出して許可を返した場合で何が違うのかを整理します。どちらを選ぶべきかの判断材料と、許可が無くなった後にどこまで工事を請けられるのかまで解説します。
更新しなければ、許可は期間満了で失効する
建設業許可には5年の有効期間があります。更新の申請をしないまま期間が満了すると、許可は自動的に効力を失います。役所から取り消されるわけでも、何か処分を受けるわけでもなく、静かに終わります。
更新の申請は、有効期間が終わる前の決められた期間内に行う必要があります。受付の期間は都道府県によって違い、期限を1日でも過ぎると受け付けてもらえません。「まだ迷っているから来月にしよう」と先送りにしているうちに、選ぶ余地がなくなっていた、というのが最も多い失敗です。
まずやるべきことは、手元の許可通知書で有効期間の満了日を確認することです。そのうえで、更新の受付がいつからいつまでかを、許可を受けた都道府県の担当課に問い合わせてください。判断はそれから始まります。
「失効」と「廃業届」は何が違うのか
どちらも許可が無くなるという結果は同じですが、過程と、その後に残るものが違います。
| 更新せずに失効させる | 廃業届を出す | |
|---|---|---|
| 手続き | 何もしない | 様式第22号の4を提出(廃業から30日以内が目安) |
| 許可が無くなる時期 | 有効期間の満了日 | 届出に記載した廃業日 |
| 役所からの案内 | 満了まで更新の案内が届く | 届出以降は届かなくなる |
| 許可証の返納 | 求められないことが多い | 原本の返納を求められるのが一般的 |
| 記録上の扱い | 期間満了による失効 | 本人の意思による廃業 |
| 事業をやめる時期との関係 | 満了日まで許可が残る | 実際にやめた日に合わせられる |
大きな違いはタイミングを自分で決められるかどうかです。廃業届なら実際に事業をやめた日に合わせられますが、失効を待つ場合は満了日まで許可が残ります。逆にいえば、満了日までまだ間があるなら、その間は許可業者として工事を請けられます。
届出の具体的な書き方は建設業許可の廃業届の書き方と記載例|様式第22号の4の記入例つきにまとめています。
更新しないことを選んだ場合に起きること
「何もしない」という選択には、いくつか付いてくるものがあります。
- 更新の案内が満了日まで届き続ける——気持ちの上で区切りがつきにくいと感じる方もいます
- 経営事項審査(経審)の結果も効力を失う——公共工事の入札に参加していた場合、資格審査の前提が無くなります
- 取引先が「まだ許可がある」と思ったままになる——失効は公表されないため、こちらから伝えなければ相手は気づきません
- 再取得は新規申請になる——気が変わって続ける場合、経営業務の管理責任者や専任技術者の要件を改めて満たす必要があります
最後の点はとくに重要です。いったん失効させると、更新のように書類を出せば戻る、という話ではありません。技術者が高齢で退いてしまった後では、要件を満たせず再取得できないこともあります。「しばらく休んで様子を見たい」という意図があるなら、失効させる前に手を止めて考えてください。
廃業届を出すべきケース、失効を待ってよいケース
どちらが正しいという話ではなく、状況によって向き不向きがあります。
廃業届を出したほうがよい場合
- すでに事業をやめている——実態が無いのに許可だけ残っている状態を解消できます
- 法人を解散する予定がある——清算の手続きと並行して、許可も整理しておくほうが漏れません
- 区切りをはっきりつけたい——届出を出した時点で案内も止まり、気持ちの整理がつきます
満了を待ってもよい場合
- 満了日まで工事を続ける予定がある——請けている現場が残っているなら、許可があるうちに終わらせるほうが確実です
- 事業を譲る相手を探している——許可は会社の価値の一部です。承継やM&Aの可能性が残っているなら、急いで手放す理由はありません
- まだ完全には決めきれていない——満了日までは考える時間があります
会社を売るという選択肢を検討する余地があるなら、工務店を廃業すべきか事業承継すべきか迷ったときの判断基準を先に読んでみてください。許可も技術者も残っているうちのほうが、選べる道は多くなります。
許可が無くなった後も請けられる工事はある
許可が失効しても、建設工事が一切できなくなるわけではありません。いわゆる「軽微な建設工事」は、建設業許可がなくても請け負えます。
金額の基準は工事の種類によって分かれており、建築一式工事とそれ以外で扱いが違います。基準額は法改正で見直されることがあるため、実際に請けるかどうかを判断する際は、必ず最新の基準を都道府県の建設業担当課で確認してください。
廃業後も知り合いから小さな修繕を頼まれる、というのは職人にはよくある話です。「許可を返したから一切できない」と思い込む必要はありませんが、金額の線を越えると無許可営業になります。その線がどこにあるかだけは、正確に把握しておいてください。
よくある質問
- 更新の申請期間を過ぎてしまいました。今からできることはありますか?
- 期間を過ぎた更新申請は受け付けられません。許可は満了日で失効します。ただし、失効後に改めて新規で許可を取ることは可能です。要件を満たせるうちに動くかどうかの判断になります。まずは都道府県の担当課に、現在の状況で新規取得が可能かを相談してください。
- 廃業届を出さずに失効させると、何かペナルティはありますか?
- 更新しないこと自体に罰則はありません。ただし、事業を廃止したのに廃業届を出さないままでいると、届出義務を果たしていない状態になります。実務上すぐ問題になることは少ないものの、記録の上では事業が続いていることになるため、区切りをつける意味でも提出しておくほうが無難です。
- 許可を返した後、経営事項審査(経審)の結果はどうなりますか?
- 許可が前提になっているため、許可が無くなれば経審の結果も効力を失います。公共工事の入札参加資格も維持できません。入札参加資格の登録をしている自治体がある場合は、そちらにも別途連絡が必要になることがあります。どこに何を届けるかは自治体ごとに違うので、登録先に確認してください。
- 会社は残したまま、許可だけ返すことはできますか?
- できます。建設業許可の廃業届と、法人の解散はまったく別の手続きです。会社を存続させたまま建設業から撤退する、という形も選べます。逆に、法人を解散する場合は許可の廃業届も必要になります。両方を進める場合の順序や期限は建設業・工務店の廃業手続き完全マスターガイドで整理しています。
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許可の取り扱いは都道府県によって運用が異なり、制度も改正されます。この記事は考え方を整理したものなので、実際に手続きを進める前に、許可を受けた都道府県の建設業担当課で最新の扱いを確認してください。
更新の案内は、決断を迫る通知ではなく、考える機会をくれる通知です。ただし受付期間には終わりがあります。まず満了日を確かめて、いつまでに決めればよいのかをはっきりさせてください。期限が見えれば、迷っている時間も無駄になりません。

