廃業した翌年、まとめて請求が届いて資金繰りに困る——この話でよく挙がるのは住民税と国民健康保険料です。ところが個人事業として営んでいた方には、もうひとつ後から来る税金があります。個人事業税です。
納付書が届くのは廃業した後で、しかも住民税とほぼ同じ時期に重なります。「事業をやめたのに、なぜ事業の税金が来るのか」と戸惑う方が多いのですが、仕組みを知っていれば事前に備えられます。この記事では、個人事業税の考え方と、廃業時にやっておく申告を整理します。
個人事業税は「都道府県」に納める税金
所得税は国、住民税は市区町村と都道府県、そして個人事業税は都道府県に納めます。事業を営んでいることに対してかかる税金で、確定申告をすれば自動的に計算されるため、別途申告書を出す必要は基本的にありません。
納付は年2回に分かれているのが一般的で、納付書は年の半ばに届きます。つまり前年の所得に対する税金が、事業をやめた後にやってくることになります。この時間差が、廃業後の家計を圧迫します。
| 税金・保険料 | 誰に納めるか | いつ来るか |
|---|---|---|
| 所得税 | 国(税務署) | 廃業年の翌年3月に申告・納付 |
| 住民税 | 市区町村 | 廃業年の翌年6月ごろから |
| 個人事業税 | 都道府県 | 廃業年の翌年の年半ばごろ |
| 国民健康保険料 | 市区町村 | 廃業年の翌年度から反映 |
いずれも「前の年に稼いだ額」をもとに計算されます。収入が途絶えた後に、稼いでいた頃の水準で請求が来る——この構造は住民税と同じです。あわせて廃業後の住民税・固定資産税はどうなる?「後から来る税金」の仕組みも読んでおいてください。
そもそも課税されない場合がある
個人事業税には事業主控除があり、所得がその範囲に収まっていれば税金はかかりません。年の途中で廃業した場合、この控除は営業していた月数に応じて按分されるのが一般的です。
つまり、1年まるまる営業した年と、3か月で廃業した年とでは、控除される額が変わります。「去年はかからなかったから今年も大丈夫」とは限らないため、廃業年の所得がどれくらいになるかは、確定申告の準備と一緒に確認してください。
また、個人事業税はすべての事業にかかるわけではありません。法定業種として定められた事業が対象で、業種によって税率も異なります。建設業は対象業種に含まれますが、自分の営んでいた事業がどの区分にあたるかは、都道府県の税事務所で確認できます。
注意したいのは、資産を売った代金が所得に含まれる場合があることです。廃業にともなって重機や車両をまとめて売却すると、その年の所得が例年より膨らむことがあります。「今年は数か月しか営業していないから課税されないだろう」と考えていたのに、売却益で控除の範囲を超えていた——というのは起こりうる話です。売却の予定がある年は、その分も含めて見込みを立ててください。何をいくらで売ったかの記録は、確定申告でも必要になります。
都道府県への「事業廃止の申告」を忘れない
税務署へ廃業届を出しても、それが自動的に都道府県へ伝わるとは限りません。個人事業税を扱うのは都道府県の税事務所なので、そちらにも事業を廃止したことを届け出る必要があります。
期限は自治体によって定められており、廃業から1か月以内としているところが多く見られます。提出しないと、事業が続いている前提で扱われることがあります。税務署への廃業届と同じタイミングで済ませてしまうのが確実です。
書式は都道府県のウェブサイトからダウンロードできることがほとんどです。記入項目は多くありません。手続き全体の一覧は廃業の総仕上げ|税務署・年金事務所への提出書類とタイムリミットにまとめています。
払えないときは、届く前に相談する
収入が途絶えた後に、住民税・国保・個人事業税がほぼ同時に届きます。合計するとまとまった額になり、資産の売却代金を使い切っていると払えなくなります。
払えないと分かった時点で、納付書が来る前でも税事務所に相談できます。分割での納付や、事情によっては猶予の制度が用意されています。放置して滞納すると延滞金が加算され、状況は必ず悪化します。税金の滞納は他の債務より強い立場にあるため、後回しにしていい相手ではありません。詳しくは税金を滞納したまま廃業するとどうなる?差し押さえと分納・猶予制度を参照してください。
よくある質問
- 廃業した年の分は、いつ納めることになりますか?
- 廃業年の所得に対する個人事業税は、翌年に確定申告をした後、そこから計算されて納付書が届きます。つまり事業をやめてから1年以上先になることもあります。廃業直後に届かないからといって「かからなかった」と判断しないでください。手元の資金計画には、この分を残しておく必要があります。
- 赤字だった場合も、個人事業税はかかりますか?
- 事業所得がマイナスであれば、課税されません。また黒字でも、事業主控除の範囲に収まっていればかかりません。ただし「かからない」と「申告しなくていい」は別です。確定申告をしていれば都道府県側でも把握できますが、事業廃止の届出は別途必要になることがあります。
- 納付書が届きません。手続きに漏れがありますか?
- 課税されない年は納付書自体が届きません。所得が控除の範囲だった場合はこれに当てはまります。心配であれば、都道府県の税事務所に問い合わせれば課税の有無を確認できます。「届かない=手続き漏れ」とは限らないので、まず確認してください。
- 法人の場合はどうなりますか?
- 法人には個人事業税ではなく、法人事業税がかかります。解散した後も、清算が終わるまでは申告の義務が残ります。個人事業とは手続きの流れが違うため、法人(会社)の廃業・解散後の確定申告ガイド|清算事業年度と最後の申告を参照してください。
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税率や控除の扱いは制度改正で変わることがあり、事業廃止の申告の期限も自治体によって異なります。この記事は仕組みを整理したものなので、実際の金額や手続きは都道府県の税事務所か税理士に確認してください。
事業をやめた解放感で資金を使ってしまうと、翌年に届く3通の請求で足元をすくわれます。手元に残ったお金には、まだ名前のついていない支払いが含まれている——そう考えておけば、慌てずに済みます。
