現場の資材や工具の行き先は決まった。ところが事務所の中身が最後に残ります。机、椅子、書庫、複合機、パソコン、電話機。どれも捨てるには大きく、売れるかどうかも判断がつきません。しかもこれらは入口がばらばらです。買い取ってくれる相手、無償で引き取ってくれる相手、費用を払って処分する相手が別々にあり、まとめて1社に頼むと本来売れたはずのものまで処分費を払って捨てることになります。さらにパソコンと複合機には、データを消してから出すという工程が加わります。この記事では、仕分けの順番を整理します。
入口を3つに分ける
最初にやるのは仕分けです。売れるもの、引き取ってもらうもの、費用を払って捨てるもの。この3つに分けると、その後が早くなります。
| 行き先 | 当てはまりやすいもの | お金の流れ |
|---|---|---|
| 買取業者 | 事務机・チェア・書庫・金庫・応接セット | 代金を受け取る |
| リース会社へ返却 | 複合機・サーバー・電話機 | 返すだけ。残債があれば支払い |
| 不用品回収・産廃 | 破損したもの・古すぎるもの | 処分費用を払う |
| 専門の処理 | パソコン・ディスプレイ・小型家電 | 無料のこともある |
2行目を先に確認してください。複合機や電話機はリースのことが多く、勝手に処分すると契約違反になります。自社の所有かリースかを、契約書か引き落としの記録で確かめてから動いてください。リース契約の整理は廃業時のリース契約解除、損しないための注意点と3つの対処法にまとめています。
売れるものから先に出す
順番の要点はこれです。買取業者に先に来てもらい、引き取られなかったものを処分に回します。逆にすると、売れたはずのものまで処分費を払って捨てることになります。
事務用の家具は、状態がよければ値が付きます。とくに次のようなものです。
- メーカー品の事務机・チェア——型番が分かると評価されやすい
- 耐火金庫——重量物だが需要がある
- 書庫・ロッカー——数がまとまると引き取りやすい
- 応接セット・会議テーブル——状態次第
逆に、天板に傷が多いもの、脚がぐらつくもの、古い型のものは値が付きにくくなります。「売れるかどうか」を自分で判断せず、まとめて見てもらうほうが結果的に早く終わります。現場の在庫や工具とあわせて仕分ける場合は廃業時の在庫・材料・工具の処分方法|産廃で損せず現金化する仕分けと順序を解説を参照してください。
パソコンはデータを消してから出す
ここが最も注意の要る工程です。データを取り出し、消してから手放してください。順番を間違えると取り返しがつきません。
- 必要なデータを別の場所へ移す——会計データ、取引先の一覧、図面や写真
- 移したデータが開けることを確認する
- データを消去する——初期化だけでは不十分とされることがある
- 処分に出す
1番目を飛ばして処分してしまうと、後から必要になっても戻せません。クラウドのデータとあわせた書き出しの考え方は同じテーマの記事で扱っています。帳簿類の保存年数は廃業したら帳簿や領収書はいつまで保管する?捨てて困る書類と保存年数を参照してください。
消去の方法に不安がある場合は、証明書を発行してくれる業者に依頼する選択肢もあります。取引先の情報が入っている以上、「たぶん大丈夫」で済ませないほうが安全です。
複合機にも記録が残る
見落とされやすいのが複合機です。近年の機種は内部に記憶装置を持っており、コピーやスキャンした書類が残っていることがあります。
リースで返却する場合も、買取や処分に出す場合も、データの消去をどちらがやるかを確認してください。リース会社が返却時に処理する取り決めになっていることもあれば、こちらで消してから返す前提のこともあります。
あわせて、本体に登録した宛先やアドレス帳も消してください。取引先のファクス番号やメールアドレスがそのまま残ります。
返却の日程にも余裕を見てください。複合機は重量があり、搬出に人手と養生が要ります。エレベーターの使用時間が決まっている建物では、その調整だけで数日かかることがあります。退去日の直前に手配すると間に合いません。
金庫は別扱いになる
什器の中で最も厄介なのが金庫です。重量があるため、通常の不用品回収では断られることがあります。
まず中身が空であることを確認してください。長く使っていない金庫には、古い契約書や実印が入ったままのことがあります。鍵やダイヤルの番号が分からない場合は、開錠業者に依頼することになり、これも日数がかかります。
耐火金庫は買い取ってもらえることもあります。処分に費用がかかると決めつけず、什器の買取と一緒に見てもらってください。
社名の入ったものは分けて扱う
什器の中には、社名や屋号が入っているものがあります。これらは中古で流通すると紛らわしいので、扱いを分けてください。
- 社名入りの表示板・プレート——外して処分する
- 屋号の入った封筒・書類——溶解処理か細断
- 社判・ゴム印——判読できない状態にしてから捨てる
印鑑類の扱いは廃業したら会社の印鑑はどうする?実印・銀行印・角印の扱いと捨てるタイミングに、建設業の標識は建設業の標識(金看板)は廃業したらどうする?掲示義務と外すタイミングにまとめました。
よくある質問
- 買取に来てもらうほどの量ではありません。
- 量が少ないと出張の費用に見合わず断られることがあります。その場合は、現場の工具や資材とまとめて相談するか、地域の不用品回収に依頼することになります。
- 複合機がリースかどうか分かりません。
- 毎月の引き落としがあればリースの可能性が高くなります。通帳から契約先をたどる手順は親の会社の通帳がどこにあるか分からない|事業用口座を探す順番と調べ方が参考になります。
- パソコンを個人で使い続けたいのですが。
- 事業用の資産を自分用に切り替える手続きがあります。帳簿上の処理を伴うので、廃業後も事業用の車や工具を自分で使いたい|家事転用の手続きと税金を参照してください。
- 捨てるものが多く、退去日に間に合いません。
- 買取と処分の日程を先に押さえてください。とくに月末は業者が混みます。明け渡しの1か月前には手配を始めるほうが安全です。
まとめ
事務所の中身は入口を3つに分けるところから始まります。売れるもの、返すもの、費用を払って捨てるもの。
順番は、リースかどうかを確認してから、買取業者に先に来てもらい、残ったものを処分に回す。パソコンはデータを移して消してから出す。複合機の記録も忘れない。社名の入ったものは分けて扱う。
金額としては大きくありませんが、順番を間違えると売れたはずのものに処分費を払うことになります。ここだけ守れば、あとは手を動かすだけです。
使っていた机を運び出すと、その形に日焼けの跡が残っています。何年そこに座っていたかが、床のほうに記録されていたことに気づきます。
