公共工事を請け負うために経営事項審査(経審)を受けてきた会社にとって、廃業の手続きは一般の建設業者より少しだけ複雑です。毎年の決算のたびに書類を揃え、点数を上げるために努力してきた経審。それを「やめます」と伝える窓口はどこなのか、そもそも届出が必要なのか——調べても、廃業を前提にした解説はほとんど見つかりません。
この記事では、経審を受けていた事業者が廃業するときに何が起きるのかを、建設業許可との関係から整理します。入札参加資格の扱いや、動くべき順番も解説します。
経審は「建設業許可があること」が前提の制度
まず押さえておきたいのは、経審が単独で存在する制度ではないという点です。経営事項審査は、建設業許可を持つ事業者が、公共工事を直接請け負うために受ける審査です。許可があって初めて成り立ちます。
したがって、建設業許可の廃業届を出せば、その前提が消えます。経審について別途「やめます」という届出を出す必要は、基本的にありません。許可が無くなれば、経審の結果も意味を持たなくなります。
廃業届そのものの書き方は建設業許可の廃業届の書き方と記載例|様式第22号の4の記入例つきにまとめています。
ただし「入札参加資格」は別に連絡が要る
ここが最も見落とされる部分です。経審の結果を使って、国・都道府県・市町村それぞれに「入札参加資格」の登録をしているはずです。この登録は、発注機関ごとに独立しています。
| 対象 | 廃業したときの扱い | こちらから連絡が要るか |
|---|---|---|
| 建設業許可 | 廃業届を提出して失効 | 必要(30日以内が目安) |
| 経営事項審査の結果 | 許可の失効にともない意味を失う | 原則として不要 |
| 入札参加資格の登録 | 発注機関ごとに登録が残る | 必要。登録している機関すべてに |
| 各種の指名願い | 同上 | 必要な場合がある |
複数の自治体に登録している会社ほど、連絡先が増えます。過去に提出した入札参加資格審査の申請書類を探して、どこに登録しているかを一覧にしてください。記憶だけで数えると、必ず漏れます。
放置するとどうなるか
登録を残したまま廃業すると、次のようなことが起こります。
- 指名通知や入札の案内が届き続ける——事務所を引き払った後も、転送先に届きます
- 更新の案内が来る——入札参加資格には有効期間があり、その都度案内が送られます
- 辞退の扱いになる——指名を受けて応じない状態が続くと、記録として残ることがあります
実害が大きいわけではありませんが、「事業を続けている」という前提で扱われ続けるのは気持ちのよいものではありません。電話一本で済むことも多いので、廃業届と同じ時期に済ませてしまうのが無難です。
途中まで受注している工事がある場合
公共工事を受注していて、まだ完成していない状態で廃業する場合は、事情が変わります。契約は途中で勝手に終わらせられません。発注機関との協議が必要になり、場合によっては契約解除の手続きや、違約金の話に及ぶこともあります。
この場合、廃業届を出す前に、まず発注機関の担当窓口に相談してください。順番を逆にすると、許可を失った状態で契約だけが残るという厄介な状況になります。工期の残りが短ければ、完成させてから廃業したほうが結果的に穏便に済みます。
廃業のタイミングをどう決めるか
経審を受けている会社の場合、次の点を踏まえて時期を考えると無理がありません。
- 受注済みの工事を完成させてから——契約の途中解除を避けられます
- 経審の更新時期の前に——続ける気がないなら、決算後の申請作業を1回減らせます
- 入札参加資格の更新前に——更新してすぐ廃業すると、手数料と手間が無駄になります
全体のスケジュールの組み方は工務店廃業の準備はいつから始める?やることリストと6ヶ月スケジュール完全版を、届出全体の一覧は建設業・工務店の廃業手続き完全マスターガイドを参照してください。
よくある質問
- 経審の点数を上げるために払った費用は、戻ってきますか?
- 戻りません。審査手数料も、書類作成を依頼した費用も、支払い済みのものは返還されないのが通常です。だからこそ、続けるかどうか決めきれない年に、惰性で経審を受け直さないことが大切です。迷っている段階なら、更新の時期が来る前に方針を固めておいてください。
- 廃業したあと、また公共工事を請けたくなったらどうなりますか?
- 建設業許可を新規で取り直したうえで、経審も改めて受けることになります。以前の点数を引き継ぐことはできません。完成工事高などの実績が評価に影響するため、ブランクがあると不利になります。再開の可能性が少しでもあるなら、廃業ではなく休業という選択肢もあります。違いは廃業と休業(休眠会社)の違い|すぐ畳まずに様子を見るという選択肢にまとめています。
- 会社は残して、公共工事だけやめることはできますか?
- できます。入札参加資格の登録を取り下げ、経審を受けるのをやめれば、公共工事から手を引くことになります。建設業許可は維持できるので、民間工事は続けられます。「公共工事の書類仕事に疲れたが、仕事自体はやめたくない」という場合、この形を選ぶ会社もあります。
- 経審の結果通知書は、廃業後も取っておくべきですか?
- 保管しておいてください。過去の完成工事高や技術者の実績を示す資料として、後から役に立つことがあります。とくに技術者本人が転職する際、実務経験の証明を求められる場面があります。書類の保存年数の考え方は親の工務店廃業で「図面と契約書」を捨ててはいけない理由|保管義務の一覧を参照してください。
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入札参加資格の取り扱いは発注機関ごとに異なり、制度も見直されます。この記事は考え方を整理したものなので、実際の手続きは許可を受けた都道府県の建設業担当課と、登録している各発注機関に確認してください。
経審と入札参加資格は、毎年の書類仕事として手間をかけてきたぶん、やめるときも一手間かかります。とはいえ必要なのは、登録先を洗い出して連絡を入れることだけです。過去の申請書類を引っ張り出すところから始めてください。
