「建設業を廃業するのに、役所へ書類を出す必要があるなんて知らなかった」——。これは、元工務店経営者から実際に寄せられる声です。
建設業許可を取って営業していた事業者が廃業するときは、廃業の日から30日以内に「廃業等届出書(様式第二十二号の四)」を提出する義務があります。提出を怠ると、建設業法第50条により最大50万円の罰金または情状により過料の対象になります。
とはいえ、様式は国土交通省のPDFで配布されており、書き方の具体的な手本がネット上に少ないのが現状です。この記事では、廃業等届出書の書き方・提出先・期限・添付書類・記入例を、実務で使われるパターンに沿って解説します。
この記事のポイント
- 建設業の廃業届は「様式第二十二号の四(廃業等届出書)」1枚が本体
- 提出期限は「廃業の事実が発生した日から30日以内」(猶予なし)
- 知事許可は都道府県土木事務所、大臣許可は地方整備局へ提出
- 届出事由は5種類あり、事由ごとに届出人が異なる(本人・相続人・代表者など)
- 添付書類は許可通知書の原本返納が基本、添付漏れで差し戻される例が多い

建設業の廃業届とは(様式第二十二号の四)
建設業許可業者が廃業するときに提出する書類は、建設業法施行規則に定められた「様式第二十二号の四 廃業等届出書」です。A4用紙1枚の簡素な様式ですが、記載ミスがあると差し戻されます。
様式は国土交通省または各都道府県の建設業許可担当窓口のウェブサイトから無料でダウンロードできます。「建設業許可 廃業届 様式」で検索すれば最新版が入手できます。
提出が必要な5つの事由
廃業等届出書は「完全廃業」だけでなく、以下5つの事由いずれかが発生した場合に提出義務があります。
- ①廃業(事業そのものを畳む)— 届出人:本人または法人代表者
- ②死亡(個人事業主の死亡)— 届出人:相続人
- ③合併による消滅(法人が吸収合併で消滅)— 届出人:存続会社の代表者
- ④破産による解散— 届出人:破産管財人
- ⑤一部業種の廃止(28業種のうち特定業種のみ廃止)— 届出人:本人または法人代表者

誤解が多いのが⑤の「一部業種の廃止」です。たとえば土木工事業と建築工事業の2業種で許可を取っていて、土木だけ辞める場合も届出が必要です。建設業自体を続けるから届出不要、と思い込むと見落とします。
提出期限は「30日以内」——起算日の考え方
建設業法第12条により、廃業等の事実が発生した日から30日以内に届出をしなければなりません。起算日を間違えると期限超過になるので、事由ごとに確認します。
| 事由 | 起算日(30日の起点) |
|---|---|
| ①廃業 | 廃業した日(最後の業務の日、または廃業決議の日) |
| ②死亡 | 死亡した日 |
| ③合併消滅 | 合併の効力発生日 |
| ④破産解散 | 破産手続開始決定の日 |
| ⑤一部業種廃止 | 当該業種の業務を停止した日 |
期限を過ぎた場合、建設業法第50条第1項により6月以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になりえます。実務では即罰金になる例は少ないものの、指名停止や次回許可取得時の不利益につながるため、必ず期限内に提出します。
提出先:知事許可か大臣許可かで窓口が違う
建設業許可には「知事許可」と「大臣許可」の2種類があり、それぞれ提出先が異なります。許可通知書または許可証明書の許可番号を確認してください。
- 知事許可(1つの都道府県のみに営業所):当該都道府県の土木事務所または建設業許可窓口
- 大臣許可(2つ以上の都道府県に営業所):主たる営業所を管轄する地方整備局

提出方法:持参・郵送・電子申請
従来は窓口持参が主流でしたが、現在は郵送と電子申請(JCIP:建設業許可・経営事項審査電子申請システム)も利用できます。郵送の場合は配達記録付き(簡易書留など)を推奨します。控えが必要な場合は、コピーを同封し返信用封筒(切手貼付)を入れます。
記入例:様式22号の4の書き方(9項目)
廃業等届出書は、以下9項目を記入します。項目ごとの注意点を順に見ていきます。

- 届出年月日:窓口持参なら提出日、郵送なら投函日を記入
- 宛先:「○○県知事 殿」または「国土交通大臣 殿」
- 届出者の住所・氏名・電話番号:法人は本店所在地・商号・代表者名・印。個人は住所・氏名・印
- 許可番号:「○○県知事許可(般-○)第○○○○○号」のように完全な形で記載
- 許可年月日:直近の許可(更新)年月日
- 廃業等をした者の氏名・商号:法人・個人の区別と正式名称
- 届出の事由:5つの事由(廃業/死亡/合併/破産/一部廃止)のいずれかに〇
- 廃業等をした年月日:30日の起算日となる日付
- 許可を受けた建設業:廃止する業種をすべて記載(一部廃止なら該当業種のみ)
法人代表者死亡時の記入
個人事業主の死亡では相続人が届出人となりますが、法人代表者の死亡では法人そのものは存続するため、代表者変更の届出(廃業届ではない)が必要です。混同しないよう注意します。
添付書類:原本返納が基本
廃業届の本体様式に加え、以下の添付書類を準備します。自治体により細部が違うので、提出先の最新案内を必ず確認してください。

- 建設業許可通知書の原本(紛失している場合は「紛失届」を別途作成)
- 許可証明書(発行を受けている場合)
- 死亡を証する書面(事由②の場合:戸籍謄本、除籍謄本など)
- 合併契約書の写し(事由③の場合)
- 破産手続開始決定書の写し(事由④の場合)
- 相続関係を証する書面(事由②で相続人が届出する場合)
許可通知書の原本が見つからないケースは珍しくありません。その場合は窓口に相談し、「許可通知書紛失届」を別紙で添付することで受理されます。紛失を理由に廃業届が受理されないことはありません。
よくある間違い5選

①期限を「廃業届を書いた日から30日」と勘違い
起算日は「廃業した日」です。書類を作り始めた日ではありません。最後の工事の完成引渡日、または取締役会での廃業決議日など、事実が発生した日から30日です。
②一部業種廃止を届け出ない
28業種のうち一部だけを辞める場合も届出対象です。建設業自体は続けるから不要、という思い込みは禁物です。
③許可番号の「般」「特」の記載漏れ
一般建設業許可は「般」、特定建設業許可は「特」の表記が入ります。両方取得している場合は両方記載します。片方だけ廃止の場合は該当するほうのみ記載します。
④押印忘れ(法人は代表者印)
2021年以降、多くの行政手続きで押印が廃止されましたが、建設業許可関連は自治体により対応が異なります。提出先の最新様式を確認し、押印欄があれば代表者印(法人の場合)または個人の認印を押します。
⑤経営事項審査の結果通知書を返納しない
経営事項審査(経審)を受けている業者が廃業する場合、経審結果通知書も返納対象です。忘れやすいので廃業届と同時に手続きします。
提出後の流れ:許可番号は失効する
廃業届が受理されると、許可番号は失効し、国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」からも事業者情報が削除されます。500万円以上の工事は受注できなくなるため、廃業届提出後は500万円以上の請負契約を結ばないよう注意します。
なお、廃業届と並行して進める手続きとして、税務署への「個人事業の廃業届」、社会保険事務所での「適用事業所全喪届」、労働基準監督署での「労働保険確定保険料申告」などがあります。これらは提出先も期限も異なるため、別途チェックリストで管理します。
再び建設業を始めるときの取扱い
廃業後に再度建設業を始めたくなった場合、新規で許可申請をし直す必要があります。廃業前の許可番号は復活しません。経営業務管理責任者(経管)や専任技術者(専技)の要件も改めて満たす必要があり、実務上は新規取得と変わらない工数になります。
まとめ:30日以内に、様式1枚+原本返納で完了
建設業の廃業届は、A4用紙1枚の様式第二十二号の四に9項目を記入し、許可通知書原本とともに提出するだけです。複雑な書類ではありませんが、「30日以内」という期限と「起算日の認識」を間違えると手続きミスになります。
一部業種だけ辞めるケース、代表者死亡のケース、合併消滅のケースなど、事由ごとに届出人が変わる点も要注意です。迷ったら提出先の建設業許可窓口(都道府県土木事務所または地方整備局)に電話で確認するのが最短ルートです。
廃業届の提出は、工務店経営者としての最後の”締め”の手続きです。期限内に正確に終わらせ、次のステージへ気持ちよく進んでください。


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