工務店や建設業を廃業するとき、資金面で大きな支えになるのが「小規模企業共済」です。これは個人事業主や小規模企業の経営者が、廃業や退職に備えて積み立てておく国の制度で、いわば「経営者の退職金」にあたります。
「加入していたけれど、廃業したらいくら戻るのか分からない」「どう受け取れば税金で損をしないのか」——この記事では、廃業時の小規模企業共済の受取額の目安・受け取り方・税金・請求手続きを分かりやすく解説します。
この記事は制度の概要を分かりやすくまとめたものです。正確な受取額や最新の制度内容は、必ず運営元の中小機構(中小企業基盤整備機構)の公式サイトや窓口でご確認ください。
小規模企業共済とは
小規模企業共済は、中小機構が運営する共済制度です。毎月一定の掛金(月額1,000円〜70,000円、500円単位で選択)を積み立て、廃業・退職時に「共済金」として受け取れます。
- 掛金は全額が所得控除になり、加入中の節税効果が高い
- 廃業時には、積み立てた掛金以上の金額が戻る仕組み
- 加入対象は、建設業なら常時使用する従業員20人以下の個人事業主・会社役員など
つまり「加入中は節税」「廃業時は退職金代わり」という、小規模事業者にとって心強い制度です。
廃業時に受け取れるのは「共済金A」
小規模企業共済の受取額は、受け取る理由によって区分が分かれます。個人事業の廃業や会社の解散で受け取る場合は、最も受取率が高い区分である「共済金A」が適用されます。
| 受け取る理由 | 区分 | 受取額の傾向 |
|---|---|---|
| 個人事業を廃業した/会社が解散した | 共済金A | 最も高い |
| 老齢給付(65歳以上・一定の納付月数) | 共済金B | 高い |
| 個人事業を法人成りして資格喪失 等 | 準共済金 | 中 |
| 任意解約 | 解約手当金 | 低い(元本割れの可能性) |
廃業に伴う受け取りは「共済金A」となり、掛金納付月数に応じて掛金合計を上回る金額が戻るのが大きなメリットです。
廃業でいくら戻る?受取額の目安
受取額は「掛金月額」と「掛金を納めた月数」で決まります。以下は掛金月額1万円で納め続けた場合の共済金Aのおおよその目安です(中小機構が公表する試算例にもとづく概算)。
| 掛金の納付期間 | 掛金の合計額 | 共済金A(廃業)の目安 |
|---|---|---|
| 5年(60ヶ月) | 60万円 | 約62万円 |
| 10年(120ヶ月) | 120万円 | 約129万円 |
| 15年(180ヶ月) | 180万円 | 約201万円 |
| 20年(240ヶ月) | 240万円 | 約278万円 |
長く納めるほど、掛金合計を上回る割合(運用益)が大きくなるのが分かります。掛金月額が3万円なら上記の約3倍、というように比例して計算できます。正確な金額は中小機構の「加入シミュレーション」で必ず確認してください。
⚠️ 注意:納付月数が短いと受け取れない場合がある
共済金A・共済金Bは、掛金の納付月数が6ヶ月未満だと受け取れません。加入してすぐの廃業では掛け捨てになる可能性があるため注意が必要です。
共済金の受け取り方法は3つ
共済金の受け取り方は、次の3パターンから選べます。
| 受け取り方 | 内容 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 一括受取 | 全額を一度に受け取る | 条件なし(基本の受け取り方) |
| 分割受取 | 10年または15年かけて分割で受け取る | 共済金額・年齢などの条件あり |
| 一括+分割の併用 | 一部を一括、残りを分割で受け取る | 分割受取と同様の条件あり |
分割受取・併用には「請求時に60歳以上」「共済金が一定額以上」などの条件があります。条件を満たさない場合は一括受取になります。
受け取り方で変わる「税金」の扱い
小規模企業共済の共済金には税金がかかりますが、受け取り方によって扱いが異なり、いずれも税負担が軽くなる優遇が用意されています。
| 受け取り方 | 税法上の扱い | ポイント |
|---|---|---|
| 一括受取 | 退職所得 | 退職所得控除が使え、税負担が大きく軽くなる |
| 分割受取 | 公的年金等の雑所得 | 公的年金等控除の対象になる |
| 遺族が受け取る(死亡時) | みなし相続財産 | 相続税の対象(非課税枠あり) |
一般的に、一括受取の「退職所得」は控除が大きく税制上有利になりやすいですが、最適な受け取り方はその年の他の所得や状況によって変わります。金額が大きい場合は税理士に相談すると安心です。
共済金の請求手続きの流れ
廃業して共済金を請求する大まかな流れは次のとおりです。
- 中小機構から請求書類を取り寄せる(または金融機関・委託機関で入手)
- 廃業の事実を証明する書類を準備する(個人事業の廃業届の控えなど)
- 請求書・添付書類を中小機構へ提出する
- 審査後、指定口座に共済金が振り込まれる
廃業の事実を証明するため、税務署に提出する個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届)の控えなどが必要になります。廃業届の出し方は建設業許可の廃業届の書き方と提出先・期限まとめもあわせて参考にしてください。
よくある質問
Q. 廃業前に任意解約するのと、廃業で受け取るのはどちらが得?
A. 廃業による「共済金A」のほうが、任意解約の「解約手当金」より受取率が高くなります。納付月数が短いと解約手当金は元本割れすることもあるため、廃業まで待てるなら廃業による受け取りが有利です。
Q. 掛金を払えない時期がありました。受け取りに影響しますか?
A. 掛金には「掛止め(一定期間の納付停止)」の制度があり、過去に納付が滞った期間があっても、納付済みの月数に応じて共済金は受け取れます。詳細は中小機構にご確認ください。
Q. 共済金はいつ振り込まれますか?
A. 書類の不備がなければ、請求書類が中小機構に到着してから概ね数週間程度で指定口座に振り込まれます。廃業の資金計画を立てる際は、入金までの期間も見込んでおきましょう。
まとめ:廃業時の「経営者の退職金」を取りこぼさない
小規模企業共済に加入している場合、廃業時の「共済金A」は、長年積み立ててきた掛金を上回る金額が戻る心強い資金です。受け取り方によって税金の扱いも変わるため、廃業のスケジュールに合わせて計画的に請求しましょう。
正確な受取額は中小機構の加入シミュレーションで確認し、金額が大きい場合は税理士に受け取り方を相談するのがおすすめです。廃業後の生活設計の土台として、ぜひ有効に活用してください。

