廃業にも「使える公的支援」がある
「廃業するのに補助金なんてもらえるわけがない」と思っている経営者は多いですが、実際には廃業・縮小を支援する公的制度がいくつか存在します。ただし、廃業を直接の対象とした給付金は少なく、「廃業前後の事業転換支援」「廃業後の生活支援」という形が中心です。本記事では、建設業・工務店の廃業に関連して活用できる可能性のある給付金・補助金・支援制度を整理して解説します。
廃業で使える主な公的支援 早わかり比較
建設業・工務店の廃業で使える可能性がある主な制度を一覧にしました。自社の状況に近いものから、各項目の詳細をご覧ください。
| 制度 | 主な対象 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者 | 事業転換・整理にかかる費用 |
| 事業承継・引継ぎ補助金 | 承継・M&A・廃業する事業者 | 廃業・M&Aにかかる費用 |
| 雇用調整助成金・労働移動支援助成金 | 従業員を抱えている場合 | 雇用維持・従業員の再就職支援 |
| 失業給付・職業訓練 | 廃業後の経営者本人 | 生活資金の確保・スキル習得 |
| 自治体の廃業支援制度 | 地域の事業者 | 内容は自治体ごとに様々(要確認) |
①小規模事業者持続化補助金(廃業に向けた事業転換・整理費用)
小規模事業者持続化補助金は本来「販路開拓・業務効率化」を目的とした補助金ですが、「事業承継・引継ぎ枠」では廃業に関する費用(廃業登記費用・在庫処分費用・廃業時の原状回復費用など)も対象経費として認められるケースがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額 | 最大200万円(廃業費用は最大50万円まで) |
| 補助率 | 2/3(廃業費用は定額補助の場合あり) |
| 対象者 | 小規模事業者(建設業は常時雇用5人以下) |
| 申請先 | 日本商工会議所または地域の商工会 |
申請には事業計画書の作成が必要で、採択後に経費を支出→実績報告→補助金受取という流れになります。廃業を前提とした申請の場合は、後継者なしの事業承継(廃業)計画として申請します。
②事業承継・引継ぎ補助金(廃業・M&Aの費用補助)
経済産業省が実施する「事業承継・引継ぎ補助金」では、廃業に関する費用を補助する「廃業・再チャレンジ類型」が設けられています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象費用 | 廃業登記費・在庫処分費・解体費・原状回復費・従業員再就職支援費など |
| 補助額 | 最大150万円 |
| 補助率 | 2/3以内 |
| 対象者 | 中小企業・小規模事業者(廃業する法人・個人事業主) |
| 申請先 | 中小企業基盤整備機構(中小機構)の窓口 |
この補助金は、廃業後に新たな事業を起こす「再チャレンジ」との組み合わせが要件になっている場合があります(公募回によって要件が変わるため、最新の公募要領を確認してください)。
③雇用調整助成金・労働移動支援助成金(従業員を抱えている場合)
廃業に伴い従業員を解雇せざるを得ない場合、労働移動支援助成金(再就職支援コース)が活用できる場合があります。
- 従業員の再就職支援を民間の人材紹介会社等に委託した費用の一部を助成
- 再就職が実現した場合に追加助成あり
- 申請先はハローワーク(公共職業安定所)
従業員が3名以上いる場合や、特定の業種・地域では追加支援が受けられる場合があります。廃業予定の日程が決まったら、早めにハローワークへ相談に行くことをお勧めします。
④廃業後の経営者本人向け:失業給付と職業訓練
雇用保険(失業給付)
法人の代表者として雇用保険に加入していなかった場合、廃業後は失業給付を受けられません。ただし、廃業して実質的に就業の意思・能力がある状態であれば、ハローワークで「自己都合廃業」として求職者登録を行うことができます。
求職者支援訓練・公共職業訓練
廃業後に別の職種へのキャリアチェンジを考えている場合、ハローワークを通じて職業訓練受講給付金(月10万円)を受けながら職業訓練を受けることができます。建設業の経験を活かせる訓練コース(施工管理・CADオペレーターなど)も各都道府県で開設されています。
⑤地方自治体の廃業支援制度
都道府県・市区町村によっては、独自の廃業支援制度を設けている場合があります。
- 廃業費用の一部助成(登記費用・登録抹消費用など)
- 廃業相談窓口の無料設置
- 中小企業活性化協議会による無料コンサルティング
こうした地域の支援制度は、都道府県の「中小企業支援センター」や商工会議所に問い合わせると情報が得られます。
申請時の注意点:廃業前に動くことが大原則
補助金・助成金のほとんどは、廃業完了前(または特定の手続き前)に申請する必要があります。廃業登記が終わってから申請しようとしても、すでに対象外になっているケースが多いです。廃業の意思が固まった段階で、商工会議所・ハローワーク・中小企業活性化協議会へ早めに相談することが重要です。
支援制度と並行して確認しておくこと
補助金の申請には期限と条件があります。廃業のスケジュール全体と照らし合わせて、動く順番を決めてください。
公的支援が使えなかった場合の資金の作り方
ここまで紹介した制度は、要件に当てはまらなければ使えません。「調べたが、どれも対象外だった」という結論になることも珍しくないのが実情です。その場合に取れる手を、現実的な順に挙げておきます。
- 資産を売って現金を作る——重機・車両・工具・在庫。処分費を払う前に査定に出す
- 売掛金の回収を急ぐ——入金予定を前倒しできないか、取引先に相談する
- 入金待ちの請求書を現金化する——ファクタリングという手段がある
- 支払いの猶予を相談する——税金や社会保険料は、分割や猶予の制度がある
順番が大切です。まず手元にあるものを換金し、それでも足りない場合に外部の資金調達を考えてください。売れるものを持ったまま借りると、返済の負担だけが残ります。何がいくらになるかは工務店・建設業廃業の資産売却完全ガイドで確認できます。
入金までの期間が問題になっている場合は、工務店の資金繰りを即改善する方法|建設業に特化したファクタリングとはに仕組みと注意点をまとめています。手数料がかかるため、資産の売却で足りるならそちらが先です。税金の支払いが滞りそうな場合は、放置せず税金を滞納したまま廃業するとどうなる?分納・猶予制度の活用法を確認してください。
よくある質問
Q. 個人事業主(一人親方)でも補助金は使えますか?
A. 小規模事業者持続化補助金・事業承継引継ぎ補助金は個人事業主も対象です。ただし、従業員数や売上規模などの要件があるため、自分が対象かどうかを公募要領で確認するか、商工会に相談してください。
Q. 補助金をもらうと確定申告に影響しますか?
A. 補助金・助成金は原則として「雑収入」として課税対象になります。廃業年の確定申告(または清算確定申告)で適切に計上する必要があります。詳しくは担当の税理士にご確認ください。
Q. 相談できる機関はどこですか?
A. まずは地域の商工会議所または商工会、次に都道府県の「中小企業活性化協議会」への相談をお勧めします。どちらも無料で相談に対応しており、補助金申請のサポートをしてもらえる場合があります。廃業の手続き全体については廃業チェックリストもあわせてご活用ください。
あわせて読みたい関連記事
廃業に使える支援制度の多くは、事業をやめる前に動いていることが条件になっています。畳んでから探し始めると、ほとんどが対象から外れます。調べるだけなら、決断より先でも構いません。


コメント