「廃業届は廃業してから1か月以内に出す」。親の事業をたたむ準備を始めて、そう書かれた記事やチェックリストを見た方は多いはずです。ところが、この期限は法律の改正で変わっています。2026年1月1日以後に事業を廃止した場合、税務署に出す「個人事業の開業・廃業等届出書」は、廃業した年分の所得税の確定申告期限までに出せばよいことになりました。一方で、同じ時期に出すほかの届出の中には、期限が変わっていないものもあります。「廃業届が延びたなら全部あとでいい」と考えると、変わっていない届出だけが期限切れになります。この記事では、何が変わり、何が変わっていないのかを表で整理します。ネット上には改正前の情報がまだ多く残っているので、古い記事と食い違ったときの見分け方もあわせて説明します。
何が変わったのか:廃業届の提出期限
税務署に出す廃業届(正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」)の期限は、所得税法第229条で決められています。国税庁の案内によると、2026年1月1日以後に事業を廃止した場合は、廃止した年分の所得税の確定申告期限までに提出することになりました。
確定申告期限は、通常は翌年の3月15日です(土日祝日にあたる場合は翌日)。たとえば2026年10月に廃業したなら、2027年3月15日ごろまでが期限になります。改正前は「廃業の日から1か月以内」だったので、期限が大きく延びたことになります。
| 廃業した日 | 廃業届の期限 |
|---|---|
| 2025年12月31日以前 | 廃業の日から1か月以内(改正前のルール) |
| 2026年1月1日以後 | 廃業した年分の所得税の確定申告期限まで(通常は翌年3月15日) |
| 事業主が亡くなって相続人が出す場合(2026年以後) | 亡くなった年分の確定申告期限まで(準確定申告と同じく、相続の開始を知った日の翌日から4か月) |
相続人が出す場合は、通常の「翌年3月15日」とは期限の数え方が違う点に注意してください。準確定申告と同じ期限になるため、亡くなってから4か月ほどしかありません。書き方は個人事業主が亡くなったときの廃業届の書き方【記載例】|相続人が出す届出と期限にまとめています。
期限が変わっていない届出
改正されたのは、所得税の廃業届の期限です。同じタイミングで出すことの多いほかの届出は、それぞれ別の決まりで期限が定められていて、今回の改正の影響を受けていません。
| 届出 | 出す人 | 期限 |
|---|---|---|
| 給与支払事務所等の廃止届出書 | 従業員や家族に給与を払っていた人 | 廃止の日から1か月以内 |
| 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告をしていた人 | 青色申告をやめようとする年の翌年3月15日まで |
| 事業廃止届出書(消費税) | 消費税の課税事業者だった人 | 事由が生じたら速やかに |
| 都道府県への事業廃止の届出(個人事業税) | 個人事業税の対象だった人 | 都道府県の条例で定める期限(短い期限のところもある) |
とくに見落としやすいのが、給与支払事務所等の廃止届出書の「1か月以内」です。家族を青色事業専従者にしていた場合も、給与を払っていたことに変わりはありません。最後の給与の源泉徴収や年末調整とあわせて、従業員がいた会社が廃業したら年末調整はどうなる?最後の源泉徴収と法定調書で流れを確認してください。消費税の届出は廃業時の消費税手続きまとめ|申告期限・インボイス取り消し・届出書の出し方を解説、個人事業税は廃業したら個人事業税はどうなる?後から届く3つ目の税金と事業廃止の申告で詳しく扱っています。
古い情報と食い違ったときの見分け方
改正からまだ日が浅いため、検索で出てくる記事や、自治体・金融機関が配っているチェックリストには「1か月以内」のままのものが残っています。食い違いに気づいたら、次の点を確かめてください。
- 記事の更新日が2025年以前なら、改正前の情報の可能性が高い
- 「1か月以内」と書かれている届出が、廃業届なのか、給与支払事務所等の廃止届出書なのか
- 国税庁の「個人事業の開業・廃業等届出手続」のページで、いまの期限を確認する
当サイトの個人事業の廃業届の書き方【記入例つき】|提出先・期限・同時に出す書類を解説も、改正にあわせて新旧の期限を併記する形に直しています。2025年中に廃業していて、まだ届出を出していない場合は改正前のルールが適用されるので、期限が過ぎていても早めに出しておきましょう。
期限が延びても、早めに出したほうがよい理由
期限に余裕ができたのは確かですが、廃業届を後回しにしてよいという意味ではありません。早めに出しておくと、次のような点で手続きが進めやすくなります。
- 税務署に廃業が伝わるので、翌年以降の予定納税や申告の案内が整理される
- 確定申告の時期にまとめて出そうとすると、申告書の作成と重なって忘れやすい
- 相続が絡む場合、準確定申告の4か月の期限とまとめて考えられる
廃業日がはっきり決まったら、確定申告を待たずに出してしまうのが現実的です。e-Taxやマイナポータルから出すこともできます。なお、2025年1月からは、書面で出した届出の控えに税務署の収受日付印が押されなくなりました。提出した記録を残したい場合は、提出日を控えに自分で書いておく、e-Taxで出して受信通知を保存するといった方法をとってください。
よくある質問
- 2026年に廃業して、廃業から2か月たっています。もう遅いですか。
- 2026年1月1日以後の廃業であれば、期限は廃業した年分の確定申告期限までです。いま出せば間に合います。廃業した日付を正しく記入して提出してください。
- 2025年の12月に廃業して、まだ廃業届を出していません。
- 2025年12月31日以前の廃業には改正前の「1か月以内」が適用されます。期限は過ぎていますが、出さないままにせず、できるだけ早く提出してください。扱いが心配な場合は税務署に相談しましょう。
- 家族に給与を払っていました。廃業届と一緒に出せばよいですか。
- 一緒に出すのはかまいませんが、給与支払事務所等の廃止届出書の期限は「廃止の日から1か月以内」のままです。廃業届の期限にあわせて遅らせないよう注意してください。
まとめ
2026年1月1日以後の廃業では、税務署への廃業届の期限は「確定申告期限まで」に延びました。ただし、給与支払事務所等の廃止届出書は1か月以内のまま、消費税の届出は速やかに、個人事業税は都道府県の条例で、とほかの届出の期限は変わっていません。古い情報と食い違ったら、記事の更新日と国税庁の案内を確かめてください。
この記事は2026年10月時点の制度の一般的な整理であり、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。期限や提出方法は、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
期限が延びた届出と、延びていない届出。廃業の手続きでは、一つの改正が全体に広がったように見えることがあります。表の一行ずつを確かめるのがいちばん確実です。
