古物商許可は、建設業の世界では少し特殊な立ち位置にあります。工事を請けるために取ったものではなく、中古の建材や工具、重機を買って売るために取ったものだからです。解体で出た再利用できる資材を売っていた、中古の足場材を仕入れて転売していた、下取りした重機を他社に流していた——そういう業態の会社が持っています。そして畳むときは、他の許認可と違って警察署が窓口になります。期限も短めです。さらに、廃業した後に自分の重機や工具を売る場合に許可が要るのかという疑問が必ず出てきます。この記事では、返納の手順と、その疑問への考え方を整理します。運用は都道府県ごとに異なる部分があるため、実際の手続きは管轄の警察署にご確認ください。
窓口は県庁ではなく警察署
他の許認可と最も違うのがここです。古物商許可は都道府県公安委員会が出しているもので、実際の窓口は営業所を管轄する警察署の生活安全課になります。
| 建設業許可など | 古物商許可 | |
|---|---|---|
| 出しているところ | 都道府県知事など | 都道府県公安委員会 |
| 実際の窓口 | 県庁の担当課 | 管轄の警察署(生活安全課) |
| 有効期間 | 5年など | 期限なし(更新の制度が無い) |
| 畳むとき | 廃業届・廃業等の届出 | 許可証の返納 |
| 期限の目安 | 30日以内が多い | 10日以内とされる |
下二行に注意してください。古物商は「届け出る」というより「許可証の現物を返す」手続きです。そして期限が他より短く設定されています。他の届出と同じ感覚で後回しにすると越えます。
また、更新の制度が無いため「そのうち期限切れになる」ということが起きません。返納しない限り、許可は残り続けます。何を持っているか分からない段階なら、親が何の許可を持っているか調べる方法|建設業許可・登録の棚卸し手順の手順で確かめてください。
返納に持っていくもの
手ぶらでは受け付けてもらえません。許可証の現物が要ります。あわせて返納理由を書いた書面を求められるのが一般的です。
- 古物商許可証——手帳型のもの。これが本体
- 返納理由書——様式は警察署でもらえる。廃業した旨を書く
- 本人確認できるもの——運転免許証など
- 法人なら解散を示す書類を求められることがある
問題になりやすいのが一つ目です。許可証を紛失していると、その事情を説明する書面が別に要ります。事務所の片づけを始める前に、金庫や机の引き出しから探し出しておいてください。通帳や印鑑と同じで、後から探すと出てきません。書類や印鑑類の整理は廃業したら会社の印鑑はどうする?実印・銀行印・角印の扱いと捨てるタイミングとあわせて進めると漏れが減ります。
亡くなった方の許可の場合は、相続人が返納することになります。相続で事業を畳む場面の手順は個人事業主が亡くなったときの廃業届の書き方【記載例】|相続人が出す届出と期限にまとめました。
廃業後に自分の重機を売るのに許可は要るか
これが最も多い疑問です。結論から言えば、自分が使ってきた重機や工具を売り払うだけなら、古物商の許可は要らないと考えるのが一般的です。
古物営業とされるのは、売るために古物を買い受けるような取引です。事業で使っていた自社の資産を処分するのは、これとは性格が違います。だから「先に許可を返したら重機が売れなくなる」という心配は、基本的には要りません。
ただし境目が曖昧になる場面はあります。他社から中古品を仕入れて売る形が続くなら、それは廃業後も古物営業です。判断に迷う取引があるなら、返納の前に警察署へ具体的に相談してください。
手持ちの重機や工具をどう手放すかは、金額の差が大きい部分です。売る・捨てる・引き取ってもらうの仕分けは廃業時の在庫・材料・工具の処分方法|産廃で損せず現金化する仕分けと順序を解説に、重機を含む資産全体の売り方は工務店・建設業廃業の資産売却完全ガイド|トラック・重機・農機具・土地を高く売る方法にまとめています。
古物台帳は返納後も残す
古物商には、取引を記録した帳簿を備えて保存する義務があります。許可証を返しても、記録まで一緒に処分してよいわけではありません。保存の期間は最終の記載から一定年数とされています。
この記録が効いてくるのは、買い取った品物に後から問題が見つかったときです。誰から、いつ、いくらで買ったか。それを示せるかどうかで立場が変わります。中古の建材や重機を扱っていたなら、なおさら残しておくべき記録です。
保存年数は書類の種類ごとに違うため、まとめて処分しないでください。整理の考え方は廃業したら帳簿や領収書はいつまで保管する?捨てて困る書類と保存年数にまとめています。
標識とネット上の表示を下ろす
古物商は、営業所の見やすい場所に標識(古物商プレート)を掲げることが求められています。許可が無くなれば、掲げておく理由も無くなります。
忘れやすいのはインターネット側です。ホームページや通販サイトで中古品を扱っていた場合、許可番号を表示していた箇所が残ります。公安委員会に届け出ていたURLがあるなら、そちらの扱いも確認してください。ネット上の情報の消し方は廃業したら屋号やホームページはどうする?商号・ドメイン・ネット上の情報の消し方を参照してください。
よくある質問
- 何年も古物の取引をしていません。返納は要りますか。
- 取引が無くても許可は残っています。更新の制度が無いので、放置しても自然に消えることはありません。廃業するのであれば返納してください。
- 返納をしないとどうなりますか。
- 返納を怠った場合の扱いは法令に定めがあります。具体的な取り扱いは管轄の警察署に確認してください。いずれにせよ、営業していない許可を残しておく利点はありません。
- 許可証を紛失しました。返納できませんか。
- 紛失した事情を説明する書面を添えて手続きする形になるのが一般的です。まず警察署に電話で事情を伝え、必要な書類を確認してください。
- 廃業後に、家にある古い工具をフリマアプリで売るのは大丈夫ですか。
- 自分の持ち物を売る行為は古物営業とは性格が違うと考えられます。ただし仕入れて転売する形になれば話が変わります。継続的に行うつもりがあるなら、事前に警察署へ相談してください。
まとめ
古物商許可で押さえるところは三つです。窓口は警察署、期限は10日と短い、そして更新が無いので放置しても消えない。他の許認可と勝手が違うぶん、先に頭を切り替えておくと迷いません。
そして許可証の現物を先に探しておくこと。事務所の片づけが進んでからでは見つからなくなります。あわせて古物台帳は返納後も保存してください。手続き全体の時系列は建設業・工務店の廃業手続き完全マスターガイド|届出・税務・保険・許可返納を時系列で解説にまとめています。
この記事は制度の一般的な整理であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。返納の期限・様式・添付書類、そして古物営業に当たるかどうかの判断は、具体的な事情によって変わります。手続きの前に、管轄の警察署にご確認ください。
中古品を扱う許可は、誰かの手を離れた物をもう一度使えるようにする仕事に付いていました。最後にその許可証を返しに行くのは、少し不思議な手続きです。
