事務所を引き払うと決めたら、光熱の契約も止めることになります。単純な手続きに見えますが、順番を誤ると困った状況になります。電気を先に止めてしまい、照明のない中で残りの片づけをすることになった。水道を止めたあとに清掃が必要になった。原状回復の工事に入る業者が、電源が無くて作業できない。いずれも実際に起きることです。止める作業そのものは電話1本で終わりますが、いつ止めるかは片づけの工程と噛み合っていないといけません。この記事では、順番の決め方と精算の流れを整理します。
止める順番は「最後まで要るもの」から逆算する
結論から言えば、電気を最後に残すのが基本です。片づけにも清掃にも工事にも電源が要るためです。
| 止める順 | 対象 | 理由 |
|---|---|---|
| 1番目 | ガス | 使う場面が限られる。閉栓に立ち会いが要ることがある |
| 2番目 | 水道 | 清掃に使う。清掃が終わってから |
| 最後 | 電気 | 照明・工具・工事に必要。明け渡しの当日か翌日 |
ただしこれは目安です。原状回復の工事が入るなら、その工事が終わるまで電気を残す必要があります。工事の日程を先に確定させ、そこから止める日を決めてください。
立ち会いが要るかを先に確認する
止める手続きには、立ち会いが必要な場合とそうでない場合があります。
- ガス——閉栓の作業で立ち会いを求められることがあります。特に屋内に設備がある場合
- 水道——立ち会い不要のことが多いですが、地域や建物によります
- 電気——立ち会い不要のことが多いですが、設備の状況によります
立ち会いが要るなら日程の調整が入ります。明け渡しの直前に連絡すると希望日が取れないことがあるので、退去日が決まった時点で連絡してください。
法人契約なら手続きが変わる
事務所の契約が会社名義であれば、個人の引っ越しとは扱いが違います。会社の確認書類や、手続きをする人の権限を示すものを求められることがあります。
また、清算して法人格が無くなったあとでは手続きがしにくくなります。解散の登記より前に済ませるほうが軽く済みます。清算全体の流れは工務店・建設会社の解散登記の手順|法人廃業の流れ・費用・清算結了まで完全解説を参照してください。
最後の請求は退去後に届く
ここが見落とされます。止めた月の料金は、止めたあとに請求されます。事務所を引き払っているので、請求書が届かないという事態が起こります。
対策は2つです。
- 請求書の送付先を変えておく——自宅など、確実に受け取れる住所へ
- 引き落とし口座をすぐ閉じない——最後の引き落としが終わるまで残す
郵便の転送だけでは届かないものもあります。扱いは事務所を引き払った後の郵便物はどうなる?廃業時の転送手続きと届き続けるものへの備えにまとめました。口座を閉じる時期を含めた固定費の切り方は工務店廃業の「見えない固定費」を断ち切る。商工会・固定電話・事業用口座を解約する絶好のタイミングが参考になります。
自宅兼事務所なら「止める」のではなく「移す」
事務所が自宅を兼ねている場合、止めてしまうと生活ができません。この場合は解約ではなく、法人名義から個人名義へ変更する手続きになります。
名義を変えずに放置すると、法人が無くなったあとも会社名で請求が続きます。引き落とし口座を閉じた時点で未納になり、督促が届きます。自宅兼事務所なら、止めるのではなく移すと覚えておいてください。
あわせて、契約時に預けた保証金がある場合は精算で戻ることがあります。ただし自動的に振り込まれるとは限らず、返還先の口座を伝える必要があることがあります。ここでも口座を先に閉じていると受け取れません。金額は大きくないことが多いですが、順番として覚えておいてください。
名義変更は電気・ガス・水道でそれぞれ別の手続きです。1社で済むと思っていると取りこぼします。3件それぞれに連絡してください。
作業場や資材置き場が別にあるなら
事務所とは別に、作業場・倉庫・資材置き場で契約している場合があります。使っていない場所ほど忘れられます。
とくに見落とされるのが、使っていない期間も基本料だけがかかり続けていた場所です。数年前に使うのをやめた倉庫の電気が、契約だけ残っていたという話は珍しくありません。廃業を機に一度洗い出すと、思わぬ固定費が見つかることがあります。
心当たりのある場所を書き出して、それぞれ契約が残っていないかを確かめてください。何を契約しているかが分からない場合の調べ方は親が何の許可を持っているか調べる方法|建設業許可・登録の棚卸し手順の考え方が応用できます。通帳の引き落とし履歴を1年ぶん見るのが確実です。
よくある質問
- 電気はいつ止めるのが適切ですか。
- 明け渡しの当日か、原状回復の工事が終わったあとが目安です。片づけにも工事にも電源が要るため、最後に残すのが基本です。
- 止めたあとの請求はどこに届きますか。
- 契約時に登録した住所です。事務所を引き払うなら、送付先を変更しておくか、電子的な明細で受け取れるようにしておいてください。郵便の転送では届かない種類のものもあるため、住所そのものを変えておくほうが確実です。
- 会社を清算したあとでも解約できますか。
- 法人格が無くなると手続きが難しくなることがあります。解散の登記より前に済ませておくほうが確実です。
- 父の事務所です。どこと契約しているか分かりません。
- 通帳の引き落とし履歴と、事務所に届く検針票が手がかりになります。建物の管理会社が把握していることもあります。
まとめ
光熱の解約そのものは簡単ですが、止める時期は片づけの工程に従属します。原状回復の工事が終わるまで電気を残し、清掃が終わるまで水道を残す。この順番だけ守れば、止めたせいで作業ができなくなる事態は防げます。
そして、最後の請求は退去後に届きます。送付先と口座を先に手当てしておいてください。
この記事は一般的な流れの整理であり、個別の契約に対する助言ではありません。立ち会いの要否や精算の方法は事業者・自治体によって異なります。手続きの前に、契約先の窓口でご確認ください。
最後に電気を落とすとき、その部屋がどれだけ長く使われてきたかが分かります。順番を整えておくのは、その日を慌ただしくしないためでもあります。
