廃業の片づけでは、最後にまとまった量の廃棄物が出ます。ところが産業廃棄物の委託契約は、片づけが終わってから切らないと自分の首を絞めます。契約を先に解除してしまうと、最後の一山を処理してくれる相手がいなくなるからです。しかも産廃には、契約を終えたあとも残る義務があります。マニフェスト(産業廃棄物管理票)の保管です。これは事業をやめたから不要になるものではなく、決められた年数を過ぎるまで持ち続ける必要があります。この記事では、順番と、あとに残る義務を整理します。なお具体的な取り扱いは自治体によって運用が異なるため、判断の前に管轄の窓口にご確認ください。
契約を切るのは、最後の一山を出したあと
順番はこれに尽きます。片づけを終える前に委託契約を解除しないでください。
| 順番 | やること | 先にやると起きること |
|---|---|---|
| 1 | 売れるものを買取業者に出す | — |
| 2 | 残ったものを産廃で処理する | — |
| 3 | マニフェストの返送を待つ | 先に契約を切ると回収が滞る |
| 4 | 委託契約を解除する | 先にやると最後の処理を頼めない |
| 5 | マニフェストを保管し続ける | — |
1行目を飛ばさないことも大事です。売れるものまで産廃に回すと、処分費を払って捨てることになります。仕分けの考え方は廃業時の在庫・材料・工具の処分方法|産廃で損せず現金化する仕分けと順序を解説にまとめました。
マニフェストは事業をやめても保管する
ここが本題です。産業廃棄物を委託して処理したとき、その流れを記録した管理票が手元に戻ってきます。この控えには保管の義務があり、法令で年数が定められています。
重要なのは、廃業したから捨ててよい、とはならないという点です。事業をやめたあとに立入検査や照会があった場合、記録が無ければ適正に処理したことを示せません。
紙の管理票と電子マニフェストのどちらを使っていたかで、控えの持ち方が変わります。電子で運用していた場合は、システムを解約するとデータが見られなくなることがあるので、解約前に書き出しておいてください。
帳簿や領収書とあわせた保存年数の整理は廃業したら帳簿や領収書はいつまで保管する?捨てて困る書類と保存年数を参照してください。
返ってきていない管理票がないか確かめる
委託した廃棄物が最終処分まで終わると、その旨を記した票が戻ってきます。戻ってこないものがあれば、処理が終わっていない可能性があります。
廃業の片づけは量が多く、複数回に分けて出すことが普通です。最後のほうに出した分の票が、まだ戻っていない状態で契約を切ると、追いかける先が無くなります。
解除の連絡をする前に、出した分と戻ってきた分の数が合っているかを確認してください。合わない場合は、処理業者に照会してから進めます。
許可を持っている場合は届出が別に要る
ここは混同しやすい部分です。「委託契約の解除」と「許可の廃止届」は別の手続きです。
- 委託契約の解除——処理業者との民間の契約。相手に連絡して終える
- 許可の廃止届——自分が収集運搬業などの許可を持っている場合、行政に出す
自社で運搬まで手がけていた場合は、後者が必要になります。手続きは産業廃棄物収集運搬業許可の廃業手続き|廃止届出書の書き方・提出先・許可証の返納を解説にまとめました。解体やとび土工の登録とあわせて整理する場合は解体工事業・とび土工工事業の廃業ポイント|重機売却・産廃許可・解体工事業登録の廃業手続きを参照してください。
自分が何の許可を持っているか把握できていない場合は、親が何の許可を持っているか調べる方法|建設業許可・登録の棚卸し手順から確認してください。
片づけで出るものは種類が混ざる
廃業時の片づけでは、普段の現場とは違うものが出ます。種類ごとに扱いが分かれるため、まとめて頼めないことがあります。
- 木くず・コンクリートがら——通常の建設系の産廃
- 使いかけの塗料・接着剤——中身が残っていると扱いが変わる
- 石綿を含む可能性のある建材——専用の処理が必要
- 蛍光灯・バッテリー・タイヤ——品目ごとに引き取り先が違う
- 事務所のパソコンや書類——産廃ではなく別ルートになることが多い
3つ目に該当しそうなものがある場合は、自己判断で捨てないでください。処理業者に現物を見てもらってから決めるのが安全です。
量の見積もりも難しいところです。普段は現場ごとに少しずつ出しているため、事務所と倉庫をまとめて空にしたときの総量が読めません。先に業者に見に来てもらい、何回に分けて出すかを決めてから日程を組むと、片づけが止まりません。トラック1台で足りると思っていたら3回に分かれた、という誤算はよく起こります。
費用の払い方も確認しておいてください。都度払いなのか、月末にまとめて請求されるのか。最後の請求が口座を閉じたあとに届くと、支払いが面倒になります。後から届く請求の止め方は廃業後も届き続ける請求書の止め方|リース・サブスク・年会費の解約手順にまとめました。
よくある質問
- 契約書が見つかりません。
- 処理業者に連絡すれば、契約者本人であれば内容を確認できます。引き落としの記録から相手先をたどる方法は親の会社の通帳がどこにあるか分からない|事業用口座を探す順番と調べ方が参考になります。
- マニフェストを紛失してしまいました。
- 処理業者に控えが残っていることがあります。まず照会してください。再発行の可否や、記録が無い場合の扱いは自治体の窓口に相談してください。
- 廃業したあとに保管しておく場所がありません。
- 自宅などで保管することになります。量は多くないので、帳簿類と一緒に箱にまとめ、何年まで保管するかを箱に書いておくと管理しやすくなります。
- 親が亡くなり、事業を引き継いで整理しています。
- まず契約と許可の有無を確認してください。管理票が残っていない場合でも、処理業者に照会すれば流れが分かることがあります。
まとめ
産廃の委託契約は片づけが終わってから切る。これを守らないと、最後の一山を頼む相手がいなくなります。
そしてマニフェストは事業をやめても保管する。廃業したから捨ててよい書類ではありません。電子で運用していたなら、解約前にデータを書き出してください。
自分が許可を持っている場合は、委託契約の解除とは別に行政への届出が要ります。ここを混同しないでください。
この記事は一般的な流れの整理であり、個別の事案に対する助言ではありません。保管年数の数え方や品目ごとの扱いは法令と自治体の運用によります。判断の前に、管轄の窓口または処理業者にご確認ください。
片づけの最後に残るのは、たいてい捨て方の分からないものです。それでも一つずつ行き先を決めていくと、いつか床が見えます。
