親の事業を畳む手伝いを始めて、最初に詰まるのがここです。どこの銀行に口座があるのか、通帳がどこにあるのか、本人以外は誰も知らない。親に聞いても「そのへんにある」で終わる。事務所と自宅の両方を探しても出てこない。
口座が分からないと、入出金の全体像がつかめません。つまりいくら残っていて、毎月何が引き落とされているのかが分からないということです。ここが埋まらないと、その先の判断が全部止まります。この記事では、探す順番と、通帳が無い場合の調べ方を整理します。
通帳が見つからないのは、珍しいことではありません
まず前提として、個人事業や小さな会社では、口座の管理が本人の頭の中だけにあることがよくあります。通帳を1か所にまとめていない、記帳を何年もしていない、ネット銀行で通帳自体が存在しない——どれもよくある話です。
探す前に押さえておきたいのは、次の2点です。
- 本人が元気なうちに聞くのが、圧倒的に楽——後述しますが、本人以外が調べるには手続きが必要になります
- 事業用と個人用の両方がある——事業用だけ探しても、引き落としは個人口座からということがあります
探す場所には順番があります
手当たり次第に探すより、見つかりやすい順に当たったほうが早く終わります。
| 場所・手がかり | 何が出てくるか | 見つかりやすさ |
|---|---|---|
| 事務所の机の引き出し・金庫 | 通帳・印鑑・キャッシュカード | 高い |
| 確定申告の控え | 取引のある金融機関名 | 非常に高い |
| 郵便物(残高の案内・明細) | 金融機関名・支店名 | 高い |
| 仏壇・タンス・寝室の引き出し | 古い通帳・証書 | 中 |
| スマホやパソコン | ネット銀行のアプリ・ブックマーク | 中 |
| カレンダーや手帳のメモ | 暗証番号や口座のメモ書き | 低いが当たると大きい |
いちばん効くのは確定申告の控えです。決算書や収支内訳書には取引金融機関が書かれていることが多く、通帳そのものが無くても「どこに口座があるか」が分かります。税理士に依頼していたなら、その税理士が控えを持っています。
書類の在りかと保存については親の工務店廃業で「図面と契約書」を捨ててはいけない理由|保管義務の一覧も参考にしてください。事務所を引き払う前に探すことが大切です。片づけてしまうと手がかりごと失います。
通帳が無くても、引き落としから逆算できます
口座が1つでも分かれば、そこから広がります。通帳を1年分記帳すると、毎月・毎年の引き落としがすべて出てきます。これがそのまま「まだ生きている契約の一覧」になります。
逆に、契約書から口座をたどることもできます。リース会社・保険会社・組合などに連絡すれば、引き落とし口座を教えてもらえる場合があります。ただし本人以外が問い合わせる場合、本人の同意や関係を示す書類を求められます。
解約すべき契約の洗い出し方と、解約の順番は廃業の「見えない固定費」を断ち切る|商工会・固定電話・事業用口座を解約する順番にまとめています。事業用口座は最後に閉じるものなので、先に解約しないよう気をつけてください。
本人が元気な場合と、そうでない場合で扱いが変わります
ここがこの問題のいちばん重要な部分です。口座は本人のものなので、子が勝手に調べたり動かしたりはできません。
| 親の状態 | 子ができること |
|---|---|
| 元気で判断できる | 本人と一緒に窓口へ行くのが最短。委任状で代理できる手続きもある |
| 判断が難しくなっている | 成年後見などの制度を使う必要がある場合がある。家庭裁判所・専門家に相談 |
| 亡くなっている | 相続の手続きに入る。戸籍等で相続人であることを示して照会する |
「親のためだから」という理由では、金融機関は動きません。逆に言えば、親が元気なうちに一緒に確認しておくだけで、後の手間が何段階も減ります。相続が発生した後の届出については個人事業主が亡くなったときの廃業届の書き方【記載例】|相続人が出す届出と期限を参照してください。
判断能力や相続が絡む場面は、進め方を間違えると後から揉めます。この記事の範囲を超えるので、金融機関の窓口と、司法書士や弁護士に相談してください。
見つかった後にやること
口座が把握できたら、次はこの順です。
- 1年分を記帳する——年払いの契約を取りこぼさないため
- 引き落としを一覧にする——止めるもの・残すものを分ける
- 入金予定を確認する——売掛金の回収が残っていないか
- 口座を閉じるのは最後——入金と引き落としが終わってから
全体の進め方は親の事業を綺麗に畳むには?子が知っておくべき「実家の廃業」に向けた5つの準備に、時期の組み立ては工務店廃業の準備はいつから始める?やることリストと6ヶ月スケジュール完全版にまとめています。
よくある質問
- 親に聞いても「覚えていない」と言われます。
- 責めずに、書類から探すほうが早いです。確定申告の控え、郵便物、契約書の3つで大半が分かります。本人の記憶をあてにせず、紙をたどってください。それでも足りなければ、依頼していた税理士に確認するのが確実です。
- ネット銀行を使っていたようですが、通帳がありません。
- 通帳が存在しない口座もあります。スマホのアプリ一覧、メールの受信箱、パソコンのブックマークが手がかりになります。メールアドレスが事業用の独自ドメインだった場合、そのドメインを手放すと確認手段ごと失うので、解約前に確認してください。
- 使っていない古い口座も調べる必要がありますか?
- 残高が残っている可能性があるため、把握はしておいてください。長く動きのない口座は扱いが変わることがあります。金額が小さくても、後から相続の手続きで出てくると手間が増えます。
- 親名義の口座から、廃業の費用を出してもよいですか?
- 本人の同意なく子が動かすことは避けてください。本人が判断できる状態なら、本人の意思で支払う形にしてください。そうでない場合は、立て替えた記録を残したうえで、進め方を専門家に相談するのが安全です。あとから他の相続人との間で問題になりやすい部分です。
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口座の照会や相続の手続きは、金融機関ごとに必要書類が異なります。この記事は探し方の順番を整理したものなので、実際の手続きは各金融機関の窓口と、司法書士・弁護士・税理士に確認してください。
通帳を探すのは、お金を数えるためではありません。毎月何が引き落とされているかを知るためです。それが分かるまで、やめる計画は立てられません。まず確定申告の控えを探してください。
