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廃業を決めたら最初にやる「棚卸し」|資産・負債・契約を1枚に書き出す手順

廃業すると決めたものの、何から手をつければいいのか分からない。届出も資産の処分も従業員への説明も、どれも大事に見えて、どれから始めても他が気になる。結果として何も進まないまま数か月が過ぎてしまう——これは怠けているからではなく、全体像が見えていないからです。

やるべきことは、順番を決めることです。そして順番を決めるには、先に何があるかを知らなければなりません。この記事では、廃業の最初の一歩である「棚卸し」を、紙1枚で終わる形にまとめます。

なぜ棚卸しが最初なのか

棚卸しを飛ばして個別の作業に入ると、必ずどこかで詰まります。よくあるのが次のような場面です。

  • 届出を先に出したが、後から売れる資産が出てきて、廃業日との前後で税務処理が複雑になった
  • 重機を売った後に、まだローンが残っていることが分かった
  • 事務所を引き払った後に、そこに置いていた書類が必要になった

いずれも「先に全部を並べていれば防げた」種類の失敗です。棚卸しは作業ではなく、判断のための材料集めです。半日あれば終わります。

4つの区分に分けて書き出す

まっさらな紙かノートを用意して、次の4つに分けて書いていきます。パソコンよりも、納屋や事務所を歩きながら手で書くほうが漏れません。

区分 書き出すもの お金の向き
①資産 重機・車両・工具・在庫・土地・建物 入ってくる
②負債 借入・リース残債・買掛金・未払いの税金 出ていく
③契約 賃貸借・リース・保険・会費・通信・サブスク 止めないと出続ける
④書類 契約書・図面・帳簿・許可証・保険証券 —(捨ててはいけない)

この4つが揃うと、「いつまでにいくら必要で、どこから調達できるか」が見えます。廃業の計画は、そこから逆算して組み立てます。

①資産|現金になるものを洗い出す

まず納屋・資材置き場・駐車場を回って、目に入るものをすべて書き出します。「これは値がつかないだろう」という自己判断はしないでください。動かない重機も、古い農機具も、買い手がいる世界があります。

資産全体をどの順番で処分するかは工務店・建設業廃業の資産売却完全ガイドにまとめています。機体の型式と年式を控えておくと、査定を頼むときに話が早くなります。

②③負債と契約|通帳を1年分さかのぼる

負債と契約は、記憶ではなく通帳から拾います。過去1年分を記帳し、毎月・毎年の引き落としをすべて書き出してください。年払いのものを取りこぼさないために、12か月分が必要です。

ここで見つかるのは、たいてい忘れていた契約です。使っていないリース、入りっぱなしの保険、辞めたつもりの組合費。事業をやめても、解約しない限り引き落としは続きます。解約の順番には決まりがあり、間違えると損をします。詳しくは廃業の「見えない固定費」を断ち切る|解約する順番を参照してください。

借入やリースの残債は、資産の売却額と突き合わせる必要があります。売っても残債が消えないケースがあるため、金額を並べて確認してください。

④書類|捨てる前に年数を確かめる

事務所を引き払うとき、いちばん捨てたくなるのが書類です。しかし引き渡した建物に対する責任は、廃業しても残ります。図面や契約書は、後から事実を示せる唯一の記録です。

保存すべき年数は書類の種類によって違います。親の工務店廃業で「図面と契約書」を捨ててはいけない理由に一覧をまとめているので、処分の判断はそれを見てからにしてください。迷ったものは残す——保管には場所代しかかかりませんが、捨てた書類は取り戻せません。

1枚にまとめたら、順番を決める

4区分が埋まったら、次の順序で動かします。お金が入るものを先に、出ていくものを後にするのが原則です。

  1. 資産の査定を依頼する——複数社に同時に出す。ここが最も時間を稼げます
  2. 売掛金の回収を進める——事業を畳む前に動くほうが回収しやすくなります
  3. 期限の短い届出を出す——社会保険は日数が短く、待ってくれません
  4. 契約を解約する——ただし固定電話と事業用口座は最後です
  5. 書類を整理して保管する——事務所を引き払う前に運び出します

全体のスケジュール感は工務店廃業の準備はいつから始める?やることリストと6ヶ月スケジュール完全版に、提出書類と期限の一覧は廃業の総仕上げ|税務署・年金事務所への提出書類とタイムリミットにあります。

よくある質問

棚卸しにどれくらい時間をかけるべきですか?
半日から1日で十分です。完璧を目指さないでください。後から思い出したものを書き足していけば済みます。むしろ「全部把握してから動こう」として何週間も止まるほうが損失です。8割書けたら次に進んでください。
家族に相談すべきですか?
資産と負債の一覧は、少なくとも配偶者とは共有しておくことをおすすめします。廃業の実務は数か月から1年かかることがあり、その間に体調を崩す可能性もあります。本人しか把握していない状態は、家族にとって最も困る形です。金額を細かく見せたくない場合でも、「どこに何があるか」だけは伝えておいてください。
まだ廃業を決めていませんが、棚卸しだけしてもいいですか?
むしろ決める前にやるべきです。資産がいくらになり、負債がいくら残るのかが分からなければ、畳むべきかどうかも判断できません。数字が出てはじめて、続けるか・売るか・畳むかを比べられます。判断材料の集め方は工務店を廃業すべきか事業承継すべきか迷ったときの判断基準も参考にしてください。
親の事業を子が整理する場合も同じですか?
基本は同じですが、本人にしか分からない情報が多い点が難所です。契約の経緯、口約束の取り決め、誰に何を貸しているか。これらは通帳にも書類にも残りません。親が元気なうちに、一緒に納屋を歩きながら聞き取ってください。時間が経つほど、確認できることは減ります。

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廃業でいちばん重いのは、実は個々の手続きではありません。「何が残っているのか分からない」という霧の中にいる時間です。紙1枚に書き出してしまえば、やることは有限だと分かります。まず納屋を一周するところから始めてください。

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地方出身・都心在住。数年以内に実家の事業を「廃業・承継・Iターン」のどれにするか決断を迫られている当事者です。自分が調べた廃業の手続き・お金・資産整理の情報を、国税庁など公式情報を確認しながら記録・整理しています。※税理士・弁護士などの専門家ではないため、具体的な判断は各専門家・行政窓口へご相談ください。

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