水道工事を請けてきた業者が廃業するときに、いちばん手間がかかるのがこの届出です。理由は単純で、指定を出しているのが国でも県でもなく、市町村の水道局だからです。隣の市の現場も請けていたなら、その市の水道局からも別に指定を受けています。三つの市と一つの企業団で仕事をしていたなら、指定は四つ。廃止の届出も四つ出すことになります。しかも書式は水道局ごとに違い、窓口の呼び名も「水道課」「上下水道部」「企業局」とまちまちです。まとめて処理する方法はありません。この記事では、指定の数え方と、届出のときに詰まりやすい点を整理します。運用は水道事業者ごとに異なるため、実際の手続きは指定を受けた各水道局にご確認ください。
指定は「水道局の数」だけある
建設業許可は営業所の所在地で一つ、解体工事業登録は都道府県ごと。給水装置工事事業者の指定は、それよりさらに細かく、水道事業者ごとです。
| 制度 | 出しているところ | 数の目安 |
|---|---|---|
| 建設業許可 | 都道府県知事または国土交通大臣 | 1つ |
| 解体工事業登録 | 工事をする都道府県の知事 | 営業する県の数 |
| 電気工事業の登録 | 都道府県知事または経済産業大臣 | 1〜2つ |
| 給水装置工事事業者の指定 | 市町村の水道局など水道事業者 | 営業する市町村の数 |
いちばん下の行だけ桁が違います。地方で広く仕事を受けていた業者だと、指定が10を超えることもあります。まず何か所から指定を受けているのかを数えるところから始めてください。
指定証や更新の通知が手元にあれば、それが一覧です。散らばっていて分からないなら、親が何の許可を持っているか調べる方法|建設業許可・登録の棚卸し手順の手順で、通帳の引き落としや請求書から取引のあった自治体を洗い出すのが現実的です。
数え方の手がかりは「更新の案内」
指定には有効期間があり、期限が近づくと更新の案内が届きます。過去1年ほどの郵便物を見返すと、どこから来ているかが分かります。
ただし、しばらく工事をしていない市町村からは案内が来なくなっていることがあります。それは指定が消えたのではなく、更新をせずに期間が満了しただけかもしれません。満了と廃止は扱いが違うので、疑わしい先には電話で確認したほうが確実です。事務所を引き払った後の郵便物の扱いは事務所を引き払った後の郵便物はどうなる?廃業時の転送手続きと届き続けるものへの備えにまとめました。
廃止か、休止か
届出には「廃止」のほかに「休止」がある水道局が多くあります。いったん休むのか、完全にやめるのかで書式が変わります。
- 廃止——事業をやめる。指定は無くなる
- 休止——一時的に工事を請けない。再開の届出で戻せることがある
- 再開——休止していた事業を再び始める
後継者が資格を取るまで数年空くというような場合、休止のほうが実態に合うことがあります。ただし休止のまま有効期間が切れれば、結局は取り直しです。迷ったら、見込んでいる空白の長さを伝えて水道局に相談してください。
いずれの届出も、事由が生じてから30日以内とされているのが一般的です。指定が多いほど作業量が増えるので、廃業日が決まった時点で着手するのが安全です。日付の決め方は廃業日はいつにすればいい?決算期・税金・社会保険から逆算する決め方を参照してください。
主任技術者がいなくなる場合
指定を受けるには、給水装置工事主任技術者を選任していることが条件になっています。この人が退職・死亡・引退で不在になると、指定の要件を満たさなくなります。
このとき取れる道は三つです。
- 後任を選任して続ける——変更の届出を出す
- そこで畳む——廃止の届出を出す
- いったん止める——休止の届出を出す
気をつけたいのは、不在のまま放置して工事を請けてしまうことです。指定の要件を欠いた状態での施工は、指定の取消しにつながる可能性があります。一人親方で自分が主任技術者を兼ねていた場合、引退はそのまま要件の欠落になります。一人でやってきた事業を畳む段取りは一人親方の廃業手続き完全ガイド——いつ・何を・どの順番でやるかにまとめました。
なお、主任技術者の資格そのものは個人に属します。会社の指定が無くなっても免状が消えるわけではありません。資格全般の扱いは廃業しても資格は残る?施工管理技士・建築士など建設系資格のその後と手続きを参照してください。
指定業者としての表示と、受けかけの工事
指定が無くなれば、「○○市指定給水装置工事事業者」という表示を出し続ける理由も無くなります。看板、名刺、ホームページ、車体のマグネット。指定番号が入っているものは一通り確認してください。
もう一つ、申込みだけ受けて着工していない工事が残っていないかを確かめてください。指定が無くなった後は、その工事を自社で施工できません。引き継ぎ先を探すか、廃止の日を工事の完了後にずらすかの判断が要ります。廃業後も残る問い合わせへの向き合い方は工務店廃業後のアフター対応はどこまで必要?引き渡し済み住宅の責任と引き継ぎに整理しています。
よくある質問
- 10か所から指定を受けています。まとめて一度に出せる方法はありませんか。
- 指定は水道事業者ごとに独立した処分なので、まとめて処理する仕組みは基本的にありません。数が多い場合は、着工予定のない先から順に片づけていくと負担が分散します。
- もう何年も工事をしていない市があります。それでも届出は要りますか。
- 指定が生きているかどうかで変わります。有効期間が満了して失効しているなら不要な場合もありますが、自己判断せずにその水道局へ確認してください。
- 建設業許可(管工事業)の廃業届を出せば、指定も消えますか。
- 消えません。根拠となる法律も出しているところも別です。それぞれに手続きが要ると考えてください。
- 工事の記録や図面はいつまで保管すればよいですか。
- 給水装置の記録は、後から漏水や配管位置の照会があったときに必要になることがあります。書類の種類ごとの保存年数は廃業したら帳簿や領収書はいつまで保管する?捨てて困る書類と保存年数で確認してください。
まとめ
この手続きの本質は、制度の難しさではなく「数」です。指定を受けた水道局の数だけ、書式を取り寄せて、書いて、出す。それだけの作業ですが、10か所あれば10回分の時間がかかります。廃業日が決まったらすぐ着手してください。
そして主任技術者が自分自身だった場合、引退の日がそのまま要件を失う日になります。受けかけの工事が残っていないかを先に確かめてから、日付を決めてください。全体の段取りは建設業・工務店の廃業手続き完全マスターガイド|届出・税務・保険・許可返納を時系列で解説にまとめています。
この記事は制度の一般的な整理であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。届出の様式・期限・区分は水道事業者によって運用が異なります。手続きの前に、指定を受けた各水道局または行政書士にご確認ください。
水道は、蛇口をひねれば出るのが当たり前になっている仕事です。その当たり前を支えてきた指定を返すのに、何か所も回ることになる。手間の多さは、任されていた範囲の広さでもあります。
