電話は止めた、電気も止める算段がついた。ところがインターネット回線だけが最後まで残る、というのはよくある話です。回線の解約は、電話より工程が多いからです。違約金が出るのか、撤去の工事が要るのか、貸与された機器を返さなければならないのか。しかも工事が必要な場合は日程の調整が入り、退去の日に間に合わないことがあります。事務所の明け渡しが決まっているなら、逆算して動く必要があります。この記事では、順番と見落としやすい費用を整理します。
まず、何を契約しているのかを分ける
「ネット回線」と一言で呼んでいても、実際は複数の契約が重なっていることがほとんどです。解約先が別々なので、まずここを分けてください。
| 契約の種類 | 相手 | 止め忘れると |
|---|---|---|
| 回線そのもの | 回線事業者 | 基本料が続く |
| プロバイダ | プロバイダ会社 | 回線を解約しても別に残る |
| レンタル機器 | 回線事業者・プロバイダ | 返却するまで料金が発生することがある |
| オプション | 各社 | セキュリティ・電話・映像などが残る |
いちばん多い漏れが2行目です。回線とプロバイダを別々に契約している場合、回線を止めてもプロバイダの料金は請求され続けます。請求書を見て、引き落とし先が何社あるかを確かめてください。
違約金が出るかは契約時期で決まる
期間の定めがある契約だと、途中解約で違約金が発生することがあります。一方、更新のタイミングであれば、かからないこともあります。
ここで大事なのは、違約金を避けるために解約を遅らせると、そのぶん基本料を払い続けるという点です。違約金の額と、待つ月数ぶんの基本料を比べて判断してください。事業を続けていない事務所の回線を数か月維持するより、違約金を払って切ったほうが安く済むこともあります。
工事費の分割が残っている場合、解約時に残りを一括請求されることがあります。これは違約金とは別に発生します。両方を足した金額で比べてください。
撤去工事が必要かを確認する
建物から設備を撤去する工事が必要になる場合があります。判断は契約や建物の状況によりますが、影響が大きいのは次の2点です。
- 費用が発生することがある——解約時に別途請求される
- 日程の調整が要る——立ち会いが必要で、希望日に取れるとは限らない
賃貸の事務所なら、原状回復の条件に設備の撤去が含まれているかを貸主に確認してください。撤去せずに明け渡すと、後から求められることがあります。退去まわりの注意点は廃業後も届き続ける請求書の止め方|リース・サブスク・年会費の解約手順にも関連する内容があります。
退去日から逆算する
順番を間違えると、事務所は明け渡したのに回線が残る、あるいは工事に入れない、という事態になります。退去日を起点に逆算してください。
- 退去日を決める
- 回線事業者とプロバイダに連絡し、違約金・残債・撤去の要否を確認する(この時点では解約しない)
- 工事が必要なら日程を押さえる。立ち会える日で調整する
- 解約日を決める。工事日と退去日の前後関係を確認する
- レンタル機器を返却する。返送キットが届くまで日数がかかることがある
2番目を先に済ませるのが要点です。いきなり「解約します」と言うと、確認する前に手続きが進みます。まず状況を聞き、費用と工程が分かってから決めてください。
移転ではなく解約でよいか
事務所を畳んだあとも、自宅で仕事の後始末を続ける人がいます。その場合、解約ではなく移転(引っ越し)の手続きを選べることがあります。
移転なら違約金がかからない、あるいは工事費の残債を引き継げる場合があります。ただし移転先で同じサービスが使えるとは限らず、結局は解約になることもあるので、先に移転可能かを確認してください。
自宅に既に回線がある場合は、二重に持つ意味がありません。その場合は素直に解約してください。
なお、事務所の固定電話と回線をまとめて契約している場合、片方だけ止められないことがあります。電話側の段取りは【完全版】廃業で固定電話をやめる順番と取引先への挨拶にまとめているので、両方の解約時期を一度に決めてしまうほうが混乱がありません。固定費をどの順で切るかの全体像は工務店廃業の「見えない固定費」を断ち切る。商工会・固定電話・事業用口座を解約する絶好のタイミングが参考になります。
機器の返却は期限がある
貸与された機器(回線終端装置・ルーターなど)は返却が必要です。期限を過ぎると、機器の代金を請求されることがあります。
事務所を片づけていると、こうした小さな機器は他の備品に紛れます。解約を申し込んだ時点で、返す機器をまとめて1箱に入れておくと確実です。どれが貸与品か分からない場合は、契約時の書類か、事業者に型番を伝えて確認してください。
事務所の備品全体をどう仕分けるかは廃業時の在庫・材料・工具の処分方法|産廃で損せず現金化する仕分けと順序を解説が参考になります。返すもの・売るもの・捨てるものを最初に分けると後が楽です。
よくある質問
- 回線を解約すればプロバイダも一緒に止まりますか。
- 別契約であれば止まりません。一体型の契約なら同時に終わることもあります。請求がどこから来ているかを確認し、それぞれに連絡してください。
- 違約金を払わずに済む時期はありますか。
- 契約に更新月が定められている場合があります。ただし、その月まで待つ間の基本料と比べて判断してください。待つほうが高くつくこともあります。
- 撤去工事に立ち会えません。
- 貸主や管理会社に立ち会いを依頼できる場合があります。事前に事業者へ状況を伝え、対応可能な方法を確認してください。
- 父の会社の回線です。何を契約しているか分かりません。
- 通帳の引き落とし履歴と、事務所に届く請求書が手がかりになります。会社名で契約している場合、事業者に問い合わせれば契約の有無を確認できることがあります。
まとめ
ネット回線の解約は、電話より工程が多い手続きです。回線とプロバイダが別、違約金と工事費の残債は別、撤去工事には日程が要る、機器の返却には期限がある——この4つを押さえておけば、想定外の請求は避けられます。
そして順番として、解約を申し出る前に状況を聞くこと。これだけで選べる選択肢が変わります。
この記事は一般的な流れの整理であり、個別の契約に対する助言ではありません。違約金・工事の要否・返却の期限は契約ごとに定められています。手続きの前に、契約先の窓口でご確認ください。
回線を止めると、事務所から音が消えます。電話が鳴らず、通知も来ない。片づけの中でいちばん静かな瞬間かもしれません。段取りだけ整えておけば、そこで慌てずに済みます。
