事務所を明け渡す日が決まった。電気も回線も止める手配をした。ところが警備だけは、解約の連絡をしてから実際に機器が外れるまでに日数がかかります。機械警備は建物にセンサーやコントローラーを取り付けているため、契約を止めるだけでは終わらず、撤去の工事が必要になるからです。しかも工事には立ち会いが要り、希望した日に取れるとは限りません。退去の日に間に合わなければ、明け渡しが遅れるか、機器を残したまま出ることになります。この記事では、いつ何を連絡すればよいかを整理します。
解約と撤去は別の工程
まず押さえておきたいのが、契約を切ることと、機器を外すことは別だという点です。ここを一つの作業だと思っていると、日程が足りなくなります。
| 工程 | やること | かかる時間の目安 |
|---|---|---|
| 1. 解約の申し出 | 契約者から警備会社へ連絡 | その場 |
| 2. 予告期間 | 契約で定められた期間を待つ | 1〜3か月のことがある |
| 3. 撤去工事の日程調整 | 立ち会える日を決める | 数日〜数週間 |
| 4. 撤去と精算 | 機器を外し、費用を清算 | 半日程度 |
2行目が効いてきます。「今月でやめます」が通らない契約が珍しくありません。退去日が決まった時点で、まず契約書の予告期間を確認してください。
回線の解約も同じ構造で日数がかかります。両方を同じタイミングで進めると効率がよいので、資産と契約の一覧を先に作っておくと迷いません。手順は廃業を決めたら最初にやる「棚卸し」|資産・負債・契約を1枚に書き出す手順にまとめました。
退去日から逆算する
順番を間違えると、明け渡したのに機器が残る、あるいは工事に入れないという事態になります。退去日を起点に組んでください。
- 退去日を決める
- 契約書で予告期間を確認する(この時点では解約しない)
- 警備会社に連絡し、撤去費用の有無と工事の要否を聞く
- 解約日と撤去工事日を決める。立ち会える日で調整する
- 工事の当日、機器の返却と鍵の扱いを確認する
3番目を先に済ませるのが要点です。いきなり「解約します」と言うと、費用を確認する前に手続きが進みます。まず状況を聞き、いくらかかるか分かってから決めてください。
費用は「撤去費」と「違約金」で別
解約時にかかるお金は、性格の違うものが混ざります。まとめて聞かず、分けて確認してください。
- 撤去工事費——機器を外し、配線を処理する費用
- 違約金——契約期間の途中で解約した場合に発生することがある
- 機器代の残り——買取型だと残債が一括請求されることがある
- 原状回復費——壁の穴や配線跡を直す費用
3つ目は見落とされやすい部分です。警備の機器はレンタルのことも買取のこともあり、買取で分割払いにしていると残りが一括で来ます。金額が大きくなりうるので、契約の形を先に確かめてください。
一方で、預けている保証金が戻る契約もあります。返還先の口座を先に閉じると受け取れません。事業用口座を閉じる順番は工務店廃業の「見えない固定費」を断ち切る。商工会・固定電話・事業用口座を解約する絶好のタイミングを参考にしてください。
貸主に確認しておくこと
賃貸の事務所では、警備の機器をどこまで外すかで貸主と認識がずれることがあります。
典型的なのは、配線と壁の穴です。センサーの取り付け跡や、コントローラーを固定していたビス穴をどう扱うかは、原状回復の範囲の話になります。警備会社は自社の機器を外すところまでで、壁の補修まではやらないのが一般的です。
「誰がどこまで直すか」を、警備会社と貸主の両方に確認しておいてください。撤去のあとで揉めると、退去そのものが止まります。
鍵と緊急連絡先の扱い
機械警備では、警備会社に鍵を預けていることがあります。異常があったときに駆けつけるためです。
解約時には預けた鍵が返ってくるかを必ず確認してください。返却を受けないまま契約だけ終わると、鍵の所在が分からなくなります。貸主に鍵を返す際、本数が合わずに問題になることがあります。
あわせて、登録している緊急連絡先も整理してください。廃業後は事務所の電話が使えなくなるため、解約までの間に連絡が取れる番号へ変更しておく必要があります。固定電話を止める段取りは【完全版】廃業で固定電話をやめる順番と取引先への挨拶にまとめています。
解約までの間、警備を薄くできるか
予告期間が長い契約では、実際には誰もいない事務所に何か月も警備料を払うことになります。この場合、プランの変更で費用を下げられないかを相談する余地があります。
ただし注意が必要です。片づけの途中の事務所には、まだ工具や書類が残っています。警備を外した途端に盗難に遭えば、失うものは警備料より大きくなります。中身を出し終わってから薄くするのが順番です。
資材や工具の運び出しをどう進めるかは廃業時の在庫・材料・工具の処分方法|産廃で損せず現金化する仕分けと順序を解説を参照してください。
よくある質問
- 契約書が見つかりません。
- 警備会社に連絡すれば、契約者本人であれば内容を確認できます。引き落としの記録から会社名をたどる方法は親の会社の通帳がどこにあるか分からない|事業用口座を探す順番と調べ方が参考になります。
- 撤去工事に立ち会えません。
- 代理の立ち会いを認める会社が多いですが、条件は会社ごとに決まっています。事前に確認し、必要なら委任状を用意してください。
- 会社を清算したあとでも解約できますか。
- 法人格が無くなると手続きが取りにくくなります。解散の登記より前に済ませるほうが確実です。清算の流れは工務店・建設会社の解散登記の手順|法人廃業の流れ・費用・清算結了まで完全解説を参照してください。
- 機器を残したまま出ることはできますか。
- 貸主と警備会社の双方が同意すれば可能なこともありますが、原則は撤去です。残置を選ぶ場合は、責任の所在を書面にしておいてください。
まとめ
機械警備は「解約」と「撤去」が別工程です。予告期間が1〜3か月あることもあり、退去日から逆算しないと間に合いません。
費用は撤去費・違約金・機器の残債・原状回復に分かれます。まとめて聞かず、分けて確認してください。保証金が戻るなら口座を閉じる前に受け取る。預けた鍵は必ず返してもらう。そして中身を出し終わるまで警備は外さないこと。
この記事は一般的な流れの整理であり、個別の契約に対する助言ではありません。予告期間・費用・撤去の範囲は契約ごとに定められています。手続きの前に、契約先の窓口でご確認ください。
誰もいなくなった事務所を、機械だけが見張り続けている期間があります。最後に警備を解くのは、そこに守るものが無くなったという合図です。
