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廃業後に元従業員から連絡が来たら|離職票・源泉徴収票の再発行と対応義務

会社を畳んで数か月、あるいは1年が過ぎたころ、元従業員から連絡が来ることがあります。転職先から源泉徴収票を求められた、失業給付の手続きで離職票が要る、住宅ローンの審査で在籍の証明が必要になった。どれも本人にとっては急ぎの用件です。しかし会社はもうなく、事務を担当していた人もいない。手元に何が残っているかも分からない。こうした場面で「もう会社がないので出せません」と答えてよいのかどうか、判断に迷う人は少なくありません。ここでは、求められやすい書類ごとに、どこまで対応が必要かを整理します。

廃業しても、書類を出す責任がなくなるわけではない

結論から言えば、事業を終えたことを理由に、これらの書類を出さなくてよいことにはなりません。とくに源泉徴収票は、給与を支払った側が交付すべきものとされています。

実務上の問題は、義務の有無ではなく「出せる状態にあるか」です。帳簿を処分してしまった、会計ソフトごとパソコンを手放した、という状況では、作りたくても作れません。

だからこそ、畳む段階で書類を残しておくことが効いてきます。保管しておくべきものの範囲は、廃業を決めたら最初にやる「棚卸し」の段階で決めておくのが理想です。

求められやすい書類と、その出しどころ

書類 用途 廃業後に出せるか 相談先
源泉徴収票 転職先での年末調整、確定申告 記録があれば作成可能 税務署
離職票 失業給付の申請 手続きが済んでいれば本人へ交付済み ハローワーク
雇用保険被保険者証 再就職先での加入手続き 本人保管が原則 ハローワーク
在籍証明・退職証明 ローン審査、転職の確認 記録があれば作成可能
退職金の支払調書 確定申告 記録があれば作成可能 税務署

離職票と雇用保険被保険者証は、そもそも公的な機関を経由するものです。廃業時に適切に手続きしていれば、会社がなくなった後でも本人がハローワークで確認できます。

源泉徴収票を求められたとき

いちばん多いのがこれです。転職先で年末調整をする際、前職ぶんの源泉徴収票が必要になるためです。

帳簿や給与の記録が残っていれば、当時の内容をもとに作成して渡せます。用紙は税務署で入手できますし、記載方法も税務署に問い合わせれば教えてもらえます。

問題は記録が残っていない場合です。この場合、まず税務署に相談してください。提出済みの法定調書から確認できる可能性があります。それも難しいときは、元従業員本人が確定申告で対応する道があり、その手続きも税務署で案内してもらえます。

いずれにせよ、「もう会社がないので分かりません」で終わらせず、税務署に相談するよう伝えるだけでも、相手は前に進めます。

賃金の未払いが残っている場合

連絡の内容が書類ではなく、支払われていない給与や退職金についてであることもあります。これは書類の再発行とは性質が違い、より慎重な対応が要ります。

未払いの賃金については、事業主が支払えない状態であっても、一定の範囲で立替を受けられる制度があります。元従業員がその手続きを取るには、事業主側の証明が必要になる場面があります。制度の内容は廃業時に従業員への給料が払えない…未払い賃金はどうなる?で扱っています。

金額や経緯に争いがある場合は、その場で回答せず、労働基準監督署や弁護士に相談してから対応してください。総合労働相談コーナーであれば無料で相談できます。

退職金や共済に加入していた場合

中小企業退職金共済に加入していた場合、退職金は共済から従業員本人へ直接支払われる仕組みです。会社が廃業していても、本人が請求できます。

元従業員がこの仕組みを知らずに会社へ連絡してくることがあるため、加入していたのであれば、その旨と請求先を伝えてください。詳しくは中退共に入っていた会社が廃業したら?従業員の退職金と手続きにまとめています。

建設業であれば、建設業退職金共済に加入していた可能性もあります。証紙の記録が本人の手帳に残っていれば、そこから請求できます。

連絡を受けやすくしておくという備え

ここまで書いてきたことの前提として、そもそも連絡が取れる状態を残しておくことが大切です。

事務所の電話を止め、住所も変わり、誰にも辿れない状態になっていると、元従業員は困り果てます。廃業を伝える段階で、今後の連絡先として個人の携帯や自宅の住所を渡しておくだけで、こうした場面はかなり減ります。

また、労働保険の精算や社会保険の資格喪失の手続きを、廃業時にきちんと済ませておくことも重要です。ここが未処理だと、後から本人が手続きできなくなります。期限のあるものが多いため、廃業時の労働保険はどうする?労災・雇用保険の確定精算と50日以内の手続きを確認してください。

よくある質問

会社を清算して法人格がなくなった後でも、源泉徴収票を出せますか。
清算後の取り扱いは事情によって変わります。まず税務署に相談してください。元従業員が確定申告で対応する方法を案内してもらえることもあります。
帳簿を処分してしまいました。
帳簿には保存期間の定めがあり、期間内の処分は避けるべきものです。すでに手元にない場合は、税務署に提出済みの資料から確認できないかを相談してください。
退職から何年も経っていますが、対応する必要はありますか。
書類の性質によります。ただし相手が困っている以上、相談先を案内するだけでも意味があります。記録がないなら、その旨と公的な窓口を伝えてください。
元従業員から強い口調で請求され、対応に困っています。
その場で結論を出さず、労働基準監督署の総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。無料で相談できる窓口があります。

まとめ

廃業後に元従業員から連絡が来ること自体は、珍しいことではありません。多くは源泉徴収票か、公的な手続きに関する確認です。記録さえ残っていれば対応でき、残っていなくても税務署やハローワークにつなぐことはできます。畳むときに書類を残し、連絡先を伝えておく。この2つが、後の手間をいちばん減らします。

この記事は一般的な情報の整理であり、個別の事情に対する法的・税務的な助言ではありません。判断に迷う場面では、税理士・弁護士・社会保険労務士や、所轄の税務署・労働基準監督署といった公的な窓口に確認してください。

雇っていた期間の記録は、こちらにとっては過去でも、相手にとっては次の仕事に進むための現在です。残しておく理由は、義務よりもそちらのほうが大きいのかもしれません。

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地方出身・都心在住。数年以内に実家の事業を「廃業・承継・Iターン」のどれにするか決断を迫られている当事者です。自分が調べた廃業の手続き・お金・資産整理の情報を、国税庁など公式情報を確認しながら記録・整理しています。※税理士・弁護士などの専門家ではないため、具体的な判断は各専門家・行政窓口へご相談ください。

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