「廃業したら失業保険はもらえるの?」――この疑問を持つ方はとても多いのですが、個人事業主・会社経営者(役員)は原則として失業保険(雇用保険の失業給付)をもらえません。
これは、雇用保険が「雇用される側(被雇用者)」のための制度であり、事業主・役員は加入対象外だからです。ただし、状況によって例外もあります。この記事では、廃業後に使える給付・制度を整理し、当てはまるものがないか確認できるようにします。
📋 この記事でわかること
・個人事業主・経営者が失業保険をもらえない理由
・例外的にもらえるケース
・廃業後に使える代替制度(小規模企業共済・再就職手当など)
・従業員がいた場合の離職票の手続き
・廃業後の収入確保の実際的な方法
失業保険(雇用保険)の基本を確認する
失業保険の正式名称は「雇用保険の基本手当(失業給付)」です。会社などに雇用されている労働者が失業した場合に、再就職するまでの生活を支援する制度です。
雇用保険の加入条件
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
- 適用除外でないこと(農林水産業の一部など)
個人事業主・会社役員・フリーランスはこの「雇用される立場」ではないため、雇用保険に加入できません。加入できないということは、当然、失業給付も受けられません。
例外:廃業した個人でも失業給付をもらえるケース
ケース① 廃業前に従業員として雇用されていた期間がある
法人の役員(代表取締役など)でも、廃業前に別の会社に正社員・パートなどで雇用されており、雇用保険に加入していた期間がある場合、廃業(退職)後に失業給付を受けられる可能性があります。ただし、直近で役員・事業主だった期間は算定から除外されることが多いため、ハローワークへの相談が必要です。
ケース② 役員でも雇用保険に加入できていた場合
小規模な法人では、代表者以外の取締役・役員が実質的に「労働者」と同等の立場で働いており、雇用保険に「兼務役員」として加入しているケースがあります。このような場合は、廃業に伴う退職で失業給付を受けられることがあります。自身の状況に心当たりがある場合は雇用保険の加入履歴をハローワークで確認しましょう。
ケース③ 廃業前に離職した従業員
これは事業主本人ではなく、廃業に伴い退職した従業員の話です。廃業(倒産・整理解雇)を理由に退職した従業員は「特定受給資格者」として、通常より有利な条件で失業給付を受けられます。
失業保険の代わりに使える制度
① 小規模企業共済(廃業版の退職金)
小規模企業共済は、個人事業主・小規模法人の役員が加入できる「退職金の積み立て制度」です。廃業時に解約すると、積み立てた掛金+運用益を一時金または年金として受け取れます。
| 廃業理由 | 受け取り方 | 税扱い |
|---|---|---|
| 自己都合廃業(65歳未満) | 一時金または分割 | 退職所得(税優遇あり) |
| 65歳以上での廃業 | 一時金または年金 | 退職所得 or 公的年金等 |
| 病気・けがによる廃業 | 一時金 | 退職所得 |
掛金は月1,000円〜70,000円で全額が所得控除になります。まだ加入していない場合は廃業前から積み立てを始めることで、廃業時のセーフティネットを作れます。
② 再就職手当(失業給付の早期再就職ボーナス)
失業給付の受給資格がある場合(上記の例外ケース)、早期に再就職・再就業すると「再就職手当」として失業給付の残日数に応じた一時金が支給されます。廃業後に転職・開業する場合は、受給開始後に早めに動くと受け取りやすくなります。
③ 生活困窮者自立支援制度
廃業後の生活費が底をついてきた場合、市区町村の相談窓口から「生活困窮者自立支援制度」を利用できます。家賃支援(住居確保給付金)・就労支援・食料支援などを受けられます。生活保護の前段階として位置づけられており、利用しやすい制度です。
④ 持続化給付金・各種補助金(状況により)
経済環境の変化(感染症・自然災害など)が廃業の主因である場合、国・都道府県の補助金・給付金の対象になることがあります。廃業時点の制度を確認するため、商工会議所・よろず支援拠点などへの相談を検討してください。
従業員がいた場合:離職票の発行義務
廃業により従業員を解雇・退職させた場合、事業主には「離職票」を発行する義務があります。従業員が失業給付を申請するために必要な書類です。
離職票の発行手順
- ①退職後すみやかに「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークへ提出
- ②離職票の交付申請(同時に提出できる)
- ③ハローワークから離職票が届く(1〜2週間程度)
- ④退職した従業員に郵送で交付
⚠️ 離職票の発行が遅れると、元従業員が失業給付の申請でトラブルになります。廃業の混乱中でも、この手続きは優先的に行いましょう。
廃業理由と給付日数の関係
廃業(倒産・整理解雇)を理由に退職した従業員は「特定受給資格者」に該当するため、通常の自己都合退職より給付日数が長く、待機期間(7日間)後すぐに給付が開始されます(自己都合は2〜3ヶ月の給付制限あり)。離職票の「離職理由」欄の記入は正確に行いましょう。
廃業後の収入確保:実際的な選択肢
選択肢① 建設業・職人として転職する
施工管理経験・職人技術は転職市場での評価が高く、建設業の求人は2020年代以降も慢性的な人手不足が続いています。現場経験が豊富な方ほど、雇用される側として活躍できる場があります。
建設業・施工管理の転職については廃業後の転職・再就職ガイドで詳しく解説しています。
選択肢② 別の形で独立・開業する
廃業後に同業他社の下請けとして個人事業主に戻る・コンサルティングで独立するなど、完全に転職せずに事業形態を変えるケースもあります。
選択肢③ 資産を換金して生活を整える
廃業時に売却したトラック・重機・在庫材料の代金を生活費に充てながら、次のステップを考える時間を作ることも一つの方法です。資産売却については廃業時の資産売却完全ガイドを参照してください。
よくある質問
Q. 法人代表者でも失業保険をもらえますか?
A. 原則もらえません。代表取締役・代表社員などの役員は雇用保険の適用除外のため、法人廃業後に失業給付を申請することはできません。ただし、代表者以外の役員で兼務役員として雇用保険に加入していた場合は別です。
Q. 廃業した後にハローワークに行く意味はありますか?
A. あります。雇用保険の受給資格がなくても、ハローワークでは無料の職業訓練・就職相談・求人紹介を受けることができます。特に建設業から異業種への転職を考えている場合、職業訓練(ハロートレーニング)の利用で新しいスキルを習得しながら生活費を受給できる制度があります。
Q. 廃業後の生活費が心配です。何か支援制度はありますか?
A. まず市区町村の「生活困窮者自立支援制度」に相談することをおすすめします。生活保護ほどハードルが高くなく、住居確保給付金・就労準備支援などを組み合わせて利用できます。商工会・商工会議所も廃業後の相談窓口として機能しています。
まとめ
廃業後の失業保険について、ポイントを整理します。
- 個人事業主・経営者・役員は原則として失業保険(雇用保険の基本手当)をもらえない
- 例外:廃業前に雇用されていた期間がある場合・兼務役員で雇用保険に加入していた場合
- 代わりに小規模企業共済(廃業時解約)が退職金代わりになる
- 従業員がいた場合は離職票の発行が義務。特定受給資格者として給付は手厚くなる
- 廃業後の収入確保は転職・再起業・資産売却の組み合わせで考える
失業保険を受けられないからといって、完全に手詰まりではありません。使える制度を組み合わせて、廃業後の生活設計を立てることが大切です。

