親が長年続けてきた食堂や喫茶店、居酒屋を閉めることになったとき、まず思い浮かぶのは税務署への廃業届かもしれません。けれども飲食店には、それとは別に「お店を開くときに取った許可」があります。食品衛生法の営業許可です。この許可は保健所が出しているもので、店を閉めたら保健所にも廃業の届出をします。しかも期限は、税務署の届出よりずっと短く設定されていることが多いのです。さらに、夜遅くまでお酒を出していた店なら警察署への届出、収容人数の多い店なら消防署への届出が関わることもあります。窓口が保健所・警察署・消防署・税務署と分かれているので、どこに何を出すかを最初に一覧にしておくと抜けを防げます。この記事では、飲食店をたたむときに出す届出を窓口ごとに整理します。様式や期限は自治体ごとに違うため、実際に出す前に店の所在地を管轄する保健所などで確認してください。
飲食店をたたむときの届出は窓口が4つに分かれる
飲食店の廃業では、許可や届出の種類ごとに窓口が違います。まずは全体像を表で確認しましょう。
| 窓口 | 届出 | 対象になる店 | 期限の目安 |
|---|---|---|---|
| 保健所 | 営業の廃業届 | 飲食店営業などの許可を受けていた店すべて | 多くの自治体で廃業の日から10日以内 |
| 警察署 | 深夜における酒類提供飲食店営業の廃止届出 | 深夜0時以降もお酒を主に出す営業の届出をしていた店 | 廃止の日から10日以内 |
| 消防署 | 防火管理者の解任届など | 防火管理者を選任していた店 | 管轄の消防署に確認 |
| 税務署 | 個人事業の廃業届など | 個人で営業していた店 | 2026年以後の廃業は確定申告期限まで |
このうち、期限が短いのは保健所と警察署です。店を閉めたら、まず保健所への届出から片づけると考えておくとよいでしょう。
保健所への廃業届と営業許可書の扱い
飲食店の営業許可は、店の所在地を管轄する保健所に届け出ます。東京都の保健所などでは、営業を廃止したときは原則として10日以内に廃業届を出すよう案内しています。期限の書き方や様式は自治体によって違うので、許可を受けた保健所のホームページで確認してください。
届出のときには、交付されていた営業許可書を添えて出すのが一般的です。店に掲示していた許可書を、閉店の片づけの中で捨ててしまわないよう、早めに取り外して保管しておきましょう。紛失している場合は、その旨を保健所に伝えれば手続きの方法を案内してもらえます。
電子申請に対応している自治体もあり、厚生労働省の食品衛生申請等システムから手続きできる場合もあります。郵送で受け付けるかどうかも自治体によるので、事前に問い合わせておくと二度手間を避けられます。
なお、ひとつの店で複数の営業許可(たとえば飲食店営業と菓子製造業)を受けていた場合は、許可ごとに廃業の届出が必要になることがあります。許可書が何枚あるかを確認しておきましょう。
深夜にお酒を出していた店は警察署にも届ける
居酒屋やバーなど、深夜0時以降もお酒を主に出す営業をしていた店は、開業のときに警察署へ「深夜における酒類提供飲食店営業」の届出をしているはずです。この営業をやめたときは、廃止の日から10日以内に、管轄の警察署へ廃止の届出をすることになっています。
この届出は保健所の手続きとはまったく別です。保健所に廃業届を出しても警察署には伝わらないので、自分で届け出る必要があります。開業当時の書類が残っていれば、届出の控えで「深夜酒類提供」の届出をしていたかどうかを確認できます。わからない場合は、管轄の警察署の生活安全課などに問い合わせてください。接待を伴う営業で風俗営業の許可を受けていた場合も、警察署での手続きが必要です。
なお、飲食店で出すお酒を仕入れて提供するだけであれば、酒類の販売業免許は必要ありません。酒屋のように店頭でお酒を売っていた場合は、税務署で別の手続きがあります。
消防署・税務署の手続きと店の片づけ
収容人数が一定以上の飲食店では、防火管理者を選んで消防署に届け出ています。店を閉めるときは、防火管理者の解任や、防火対象物の使用をやめることについて、管轄の消防署に必要な手続きを確認してください。ビルのテナントだった場合は、ビル全体の防火管理との関係もあるため、管理会社にも伝えておきましょう。
税務署には、個人で営業していたなら廃業届を出します。2026年1月1日以後の廃業であれば、期限は廃業した年分の確定申告期限までです。書き方は個人事業の廃業届の書き方【記入例つき】|提出先・期限・同時に出す書類を解説を参照してください。アルバイトに給与を払っていた場合は、給与支払事務所等の廃止届出書を1か月以内に出します。
店の中に残った食器や厨房機器、食材の処分も廃業の作業の一部です。売れるものと処分するものの分け方は廃業時の在庫・材料・工具の処分方法|産廃で損せず現金化する仕分けと順序を解説が参考になります。仕入れ伝票や帳簿は廃業後も保存が必要なので、廃業したら帳簿や領収書はいつまで保管する?捨てて困る書類と保存年数で保存期間を確認してから処分してください。
よくある質問
- 保健所への廃業届を出さないとどうなりますか。
- 許可が残ったままの状態になり、自治体からの通知が届き続けることがあります。廃業したら、期限内に届け出るのが原則です。期限が過ぎてしまった場合も、そのままにせず保健所に連絡してください。
- 店を居抜きで次の人に譲る場合、営業許可も引き継げますか。
- 営業許可は営業する人と施設に対して出されるものなので、原則として次の人が自分で許可を取り直します。相続や法人の合併などでは地位の承継ができる場合があります。扱いは保健所に確認してください。
- 食品衛生責任者の資格は返す必要がありますか。
- 食品衛生責任者は店ごとに置く役割で、講習の修了証そのものを返す手続きは一般的にありません。店の廃業届を出せば、その店の責任者としての役割も終わります。
まとめ
飲食店をたたむときは、保健所・警察署・消防署・税務署と窓口が分かれます。期限が短いのは保健所の廃業届(多くの自治体で10日以内)と、深夜にお酒を出していた店の警察署への廃止届出(10日以内)です。営業許可書は届出に添えることが多いので、片づけの前に取り外して保管しておきましょう。
この記事は制度の一般的な整理であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。様式・期限・提出方法は自治体や警察署によって異なります。手続きの前に、管轄の保健所・警察署・消防署・税務署にご確認ください。
のれんを下ろした日から、届出の期限が数え始められます。片づけに追われる前に、許可書を一枚ずつ確かめておくと、あとの手続きが落ち着いて進められます。
