事業用の口座を閉じようとしたら、まだ引き落としが残っていて閉じられない——この詰まり方の原因は、たいてい法人クレジットカードです。カードは月々の支払いをまとめてくれる便利な仕組みですが、畳むときはその「まとめ」が逆に働きます。どのサービスがカード払いになっているかを把握しないままカードを止めると、止めたつもりのない契約が未払いになります。逆に口座を先に閉じれば、カードの引き落としができずに督促が来ます。順番を間違えると後始末が増える部分です。この記事では、何を先に止めるかを整理します。
順番を間違えると督促が来る
結論から言えば、「サービス」「カード」「口座」の順で止めます。逆から止めると必ず詰まります。
| 順番 | やること | 先にやると起きること |
|---|---|---|
| 1 | カード払いにしている契約を止める | — |
| 2 | 最後の請求が落ちるのを待つ | — |
| 3 | カードを解約する | 先にやると、止め忘れた契約が未払いになる |
| 4 | 事業用口座を解約する | 先にやると、カードの引き落としが不能になり督促が届く |
とくに4行目です。口座を閉じても、カード会社への支払い義務は消えません。引き落としができなければ、振込での請求や督促に切り替わるだけです。口座を閉じる段取りは工務店廃業の「見えない固定費」を断ち切る。商工会・固定電話・事業用口座を解約する絶好のタイミングにまとめています。
カード払いにしている契約を洗い出す
ここが実務のほとんどを占めます。明細を数か月ぶん並べるのが最も確実です。記憶に頼ると必ず漏れます。
見落とされやすいのは、金額が小さく毎月同じ額のものです。
- 会計ソフト・見積ソフトの月額——年払いだと1年に1回しか出てこない
- クラウドの保管容量・メールの独自ドメイン
- 業界団体や資格の年会費
- ETCカード・給油カード——本カードに付いていることが多い
- 広告やホームページの保守料
年払いのものは、直近の明細だけを見ると出てきません。最低でも12か月ぶんさかのぼってください。後から届く請求の止め方は廃業後も届き続ける請求書の止め方|リース・サブスク・年会費の解約手順に、屋号やドメインの整理は廃業したら屋号やホームページはどうする?商号・ドメイン・ネット上の情報の消し方にまとめました。
ETCカードは本カードと一緒に止まる
法人カードに付帯しているETCカードは、本カードを解約すると同時に使えなくなります。これ自体は自然ですが、順番の問題が起きます。
車を売る、あるいは自家用に切り替える予定があるなら、その車でETCをいつまで使うかを先に決めてください。カードを止めたあとに車を運ぶ必要が出て、高速で困るという事態が実際に起こります。
また、車載器にETCカードを挿したまま車を引き渡してしまう事故もあります。引き渡し前に抜いたか、必ず確認してください。
付帯保険とポイントは扱いが違う
法人カードには保険やポイントが付いていることがあります。解約するとどうなるかは、それぞれ別です。
付帯の保険は、カードを解約した時点で対象外になるのが基本です。出張中のけがや携行品の補償を当てにしているなら、解約の日を確認してください。
ポイントやマイルは、解約すると失効するのが一般的です。まとまった残高があるなら、解約する前に使い切るか交換してください。ただし、事業で貯めたポイントを私的に使う場合、経理上の扱いを整理しておく必要があります。判断に迷うなら税理士に確認してください。
年会費と締め日のずれに注意する
解約したのに請求が来た、という相談の多くはこれが原因です。
カードの利用は「使った日」ではなく「締め日と引き落とし日」で処理されます。月末に解約しても、その前に使った分は翌月以降に請求されます。解約の手続きが終わっても、最後の1〜2回は引き落としが残ると考えて口座を残しておいてください。
年会費も同様です。更新月の直前に解約すると、次年度の年会費が発生する直前で止められます。逆に更新後に解約すると、その年の会費は戻らないことが多くあります。更新月がいつかを確認してから解約日を決めると、無駄が減ります。
もうひとつ、社員に持たせた追加カードがある場合は本カードとは別に確認が要ります。本カードを止めれば追加カードも止まりますが、手元にカードが残ったままになることがあります。返却を受けて、磁気ストライプとICチップを断ってから処分してください。誰が何枚持っているかは、カード会社に照会すれば一覧で出してもらえます。
使えるうちに済ませておくこと
解約を急ぐ前に、カードが生きているうちにやっておくと楽になることがあります。
ひとつは支払い方法の切り替えです。廃業後も使い続けるもの——たとえば個人で残す携帯やインターネット、業界誌の購読——がある場合、先に個人名義のカードへ変更しておきます。カードを止めてから慌てて切り替えると、その間にサービスが止まることがあります。
もうひとつは最後の支払いをカードに寄せるかどうかの判断です。片づけで発生する費用(産廃の処分費、清掃、運送)をカードで払うと支払いが翌月以降になり、手元の現金に余裕ができます。ただし引き落とし日まで口座を残す必要があるので、清算の日程と合うかを確認してください。
解約の前に控えを取る
カードの明細は、解約すると見られなくなることがあります。経費の裏づけとして必要になるので、次のものを先に確保してください。
- 直近1〜2年ぶんの利用明細——PDFで保存しておく
- 年会費や手数料の記録
- 解約したことが分かる書面や画面
確定申告や、後から税務署に聞かれたときの説明に使います。保存年数の考え方は廃業したら帳簿や領収書はいつまで保管する?捨てて困る書類と保存年数を参照してください。
よくある質問
- 会社を清算したあとでもカードは解約できますか。
- 法人格が無くなると手続きが取りにくくなります。解散の登記より前に済ませておくほうが確実です。清算の流れは工務店・建設会社の解散登記の手順|法人廃業の流れ・費用・清算結了まで完全解説を参照してください。
- 分割払いやリボの残りがあります。
- 残高がある状態では解約できないことが一般的です。一括で精算するか、支払いが終わるまで待つことになります。金額を確認してから段取りを組んでください。
- 引き落とし口座をどうしても先に閉じたい場合は。
- カード会社に事情を伝え、支払い方法の変更や一括での精算ができるかを相談してください。黙って閉じると督促に進みます。
- 個人名義のカードで事業の支払いをしていました。
- カード自体は残るので解約の必要はありませんが、事業用の引き落としを止める作業は同じです。私用と事業用が混ざっている場合、経費の切り分けを整理しておいてください。
まとめ
法人カードは「サービス→カード→口座」の順で止める。これだけ守れば督促は届きません。
洗い出しは明細を12か月ぶんさかのぼる。ETCは車の予定と合わせる。ポイントは解約前に使う。年会費は更新月を見てから決める。そして明細の控えは解約前に取っておくこと。
カードは支払いをひとつにまとめてくれます。畳むときは、そのまとまりをもう一度ほどく作業になります。ほどく順番さえ守れば、困ることはありません。
